2022年02月09日 14:00 〜 15:00 10階ホール
セルギー・コルスンスキー駐日ウクライナ大使 会見

会見メモ

ロシアがウクライナの国境周辺に10万人を超えるともいわれる規模の兵力を展開し、米国、NATO加盟諸国との間で駆け引きを繰り広げる中、当事国であるウクライナのセルギー・コルスンスキー駐日大使が、同国の立場や情勢などについて話した。

会見は当初予定していた1時間を超え、約2時間半に及んだ。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

通訳 西村好美(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

NATO加盟の選択は明快

小熊 宏尚 (共同通信社外信部編集委員)

 ウクライナ情勢の緊迫を受け、コルスンスキー大使は先月に続き、都内での今年2度目の記者会見に臨んだ。1週間前にガルージン・ロシア大使も都内で会見しており、ウクライナから遠い日本もパブリックディプロマシーの分野では最前線。コルスンスキー大使は1時間の予定を大きく超えて約2時間半、厳しい表情で自国の立場を訴えた。

 くしくもこの日、「ウクライナを巡る憂慮する状況の改善を求める決議」を参院が採択し、衆参両院の決議がそろった。ロシアを緊張激化の当事者としては名指ししない、気遣いがにじむ文面ではあったが、ウクライナ国民との連帯や「力による現状変更は断じて容認できない」といった文言を含み、大使は「世界にとって重要なメッセージ」と評価した。

 大使が会見中、唯一見せた笑顔は苦笑に近いものだった。開始から1時間が過ぎ、ウクライナの中立化、いわゆる「フィンランド化」や北大西洋条約機構(NATO)非加盟の選択があり得るかという質問が寄せられた時だ。大使は2014年のクリミアとウクライナ東部での軍事行動がロシアの「中立だったウクライナへの回答だった」と強調。武力による脅しでウクライナをロシア寄りにできると考えるなら「ばかげている」とも。

 大使はこうも述べた。「米国ですら同盟なくして安全なし。ウクライナの選択は大変明快。それは欧州でありNATOなのだ」と。NATO加盟への支持率は現在59%という。

 NATO拡大(エンラージメント)のフレーズが連日メディアをにぎわせている。この用語はNATO自体も使用するが、NATOという主体が東に突き進んでいるとのイメージは、ロシア側の心理としては理解できるが客観性に疑問符が付く。ロシアと西欧の間の各主権国家が冷戦後、歴史的、地政学的な安全保障認識に基づいて加盟を決断した結果が現在のNATO領域をなしているという方がより実態に近い。会見はこの点を再認識させた。


ゲスト / Guest

  • セルギー・コルスンスキー / Sergiy Korsunsky

    ウクライナ / Ukraine

    駐日ウクライナ大使 / Ambassador of Ukraine to Japan

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