会見リポート
2019年12月10日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(39) 日朝首脳会談の真実と今後 重村智計・東京通信大学教授
会見メモ
毎日新聞記者、研究者として朝鮮半島を長く取材してきた重村氏が登壇し、小泉訪朝のキーパーソンなどこれまで明かされてこなかった舞台裏や、現在の日朝交渉の展望について語った。
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
朝鮮報道40年の興味深い裏話
五味 洋治 (東京新聞論説委員)
「朝鮮半島に関する報道は汚れやすい」―毎日新聞記者、大学教員として40年以上、朝鮮半島を報道、観察してきた重村智計さんは、雑誌編集者の言葉を今も覚えている。
「汚れる」というのは、韓国と北朝鮮との対立に巻き込まれ、色がつきやすいという意味だ。
確かに戦後、日本では「韓国=軍事独裁=悪」「北朝鮮=労働者の楽園=善」という図式が定着していた。
それを変えようとする動きも出てきた。朝日新聞の「北朝鮮のナゾ」(1976年10月)と題する連載記事が転機になったという。
政権内部の権力争いを取り上げたもので、関係者から強い抗議を受けた。その後、北朝鮮に対して踏み込んだ報道が増えていく。韓国語をしっかり学んだ特派員も増え、本格的な朝鮮半島報道の時代に入っていく。
1980年12月、反体制詩人として知られ無期懲役で服役していた金芝河氏が釈放されるという話を現地の新聞記者から聞きつけた重村さんは、夕刊で大きく伝えた。
それから、当局から電話を完全盗聴され、情報源の記者は厳しい取り調べを受けた。今では考えられない生々しいエピソードだった。
2002年と04年、小泉純一郎首相が訪朝し、首脳会談が実現した。この裏事情についても重村さんは今回の会見で、数々の新しい事実を紹介している。
気になるのは、その小泉訪朝以来停滞している日朝関係だ。
安倍晋三首相は金正恩・朝鮮労働党委員長に「条件なしの首脳会談」を提案しているが、日本人拉致問題の行方は見えないままだ。
会見でもやはり、その点に質問が集中した。
重村さんは、「今後の米朝交渉次第だが、今北朝鮮は日本と交渉するメリットを感じていないのではないか」と述べ、進展は容易ではないとの見通しを示した。
ゲスト / Guest
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重村智計 / Toshimitsu Shigemura
東京通信大学教授/元毎日新聞論説委員 / professor,
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:39