会見リポート
2019年11月22日
13:30 〜 15:00
10階ホール
「英語教育改革の行方」(2) 羽藤由美・京都工芸繊維大学教授
会見メモ
政府は11月1日、2020年度大学入学共通テストでの英語の民間試験の導入延期を発表した。
シリーズ「英語教育改革の行方」では識者や関係者を招き、従来の英語教育・入試の問題点や今回の改革の意義について、多角的に検証する。
第2回ゲストとして京都工芸繊維大学で独自のスピーキングテストを開発してきた羽藤由美教授(応用言語学)が登壇した。
羽藤氏は「圧力は確実にあった」「理性、知性は通じなかった」と英語民間試験を受け入れざるを得なかった大学の実態を訴えた。
また複数の民間試験のスコアを比較する仕組みは「50m走とマラソンで走力を比べるようなもの」と構造的欠陥を指摘。「民間試験で進めるのなら公的機関が仕様に責任を持つことが必要。民間頼みの状態は絶対避けないといけない」と強調した。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
(1) 吉田研作・上智大学特任教授 11月7日(木)14:30~16:00
(3) 下村博文・元文科相 11月29 日(金) 16:00~17:00
(4) 南風原朝和・東京大学名誉教授 12月02日(月)15:30~17:00
会見リポート
「異なる民間試験の成績は比べられない」
水戸 健一 (毎日新聞社社会部)
英語教育改革を巡るシリーズの2回目。推進派の中心的存在とされる吉田研作・上智大学特任教授に続き、大学入学共通テストへの英語民間試験の導入に疑問を投げかけ続けてきた羽藤由美・京都工芸繊維大学教授が会見した。
2020年度の導入の延期が11月1日に発表された民間試験だが、10月25日時点で全国に82校ある国立大のうちの4校が入学試験にその成績を活用しない方針を示していた。北海道大、東北大、筑波技術大、そして、羽藤教授が在籍する京都工芸繊維大だ。
グローバル化した社会で求められる英語4技能(読む・聞く・話す・書く)を大学入試で測ることが民間試験の導入の目的。京都工芸繊維大は国よりも動きが速く、17年12月のAO入試から独自に開発したコンピューター方式のスピーキングテストを用いている。
羽藤教授は自校の取り組みを踏まえ、目的や内容の異なる複数の民間試験をCEFRという1本の評価軸に落とし込むことの問題点を指摘。「マラソンと50メートル走で走力を比べることができないように、異なる民間試験の成績は比べられない」と説明した。
一方、民間試験の活用を求める学外からの圧力について「あった」と明言。文部科学省から出向する幹部が学内に存在するシステムなどを批判した。また、今後も運営費交付金や私学助成金の削減などを持ち出され、大学が民間試験の活用を強いられる恐れがあると懸念も示した。
会場からはこれからの大学入試での英語4技能評価のあり方を尋ねる質問も出た。羽藤教授は「TOEFLのようにいつでも受けられるようにするならば、大学入試センターが主導できる。それを一切、考えず『民間、民間!』となることを恐れている」と述べた。
ゲスト / Guest
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羽藤由美 / Yumi Hato
日本 / Japan
京都工芸繊維大学教授 / Kyoto Institute of Technology, Professor
研究テーマ:「英語教育改革の行方」
研究会回数:2