会見リポート
2019年11月07日
14:30 〜 16:00
9階会見場
「英語教育改革の行方」(1) 吉田研作・上智大学特任教授
会見メモ
政府は11月1日、2020年度大学入学共通テストでの英語の民間試験の導入延期を発表した。
シリーズ「英語教育改革の行方」では識者や関係者を招き、従来の英語教育・入試の問題点や今回の改革の意義について、多角的に検証する。
第1回ゲストとして、文部科学省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」の座長を務めた吉田研作・上智大学特任教授が登壇。英語教育のあるべき姿を語るとともに、英語民間試験の導入の経緯などについて質疑に応じた。
司会 倉重篤郎 日本記者クラブ企画委員
「英語教育改革の行方」
(2) 羽藤由美・京都工芸繊維大学教授 11月22日(金)13:30~15:00
会見リポート
「民間試験の活用、可能だった」
刀祢館 正明 (朝日新聞社編集局)
夏の終わり頃から急速に盛り上がった、大学入試における英語民間試験の「活用」問題。「身の丈」発言の萩生田光一・文部科学大臣が11月1日に「延期」を発表してまだ間がない7日、推進派の中心的存在とされる吉田研作・上智大学特任教授を迎えた。
吉田氏は文科省の「英語教育の在り方に関する有識者会議」の座長はじめ、同省の数々の作業部会やグループの一員として長年にわたって英語教育政策や入試改革に関わってきた人だ。活用予定の7つの民間試験の一つ、TEAPの開発者としても知られる。
いま、何を思っているのか。会場の関心はそこに集まった。
大臣の「身の丈」発言については「ショックだった」と答え、「発言は試験の本質を突いていたのでは」という質問には「よくわからなかった。ショックだった」と繰り返した。
延期せず断行できたと思うかという質問には「(ベネッセの)GTECと英検は全都道府県に試験会場を用意した。受験者の90%はこのどちらかを受ける。実施は可能だった。できる限りやってほしかった」「最初から完全なシステムを作れるとは思わない」などと答えた。
吉田氏によると、全国の中学・高校で「読む・書く・話す・聞く」の4技能統合型の授業が既に進んでおり、それをふまえた「民間試験の活用」が延期されてしまったことで、「高校生や先生たちはがっかりしている」という。
会場からの質問で、吉田氏がTEAPに関わった一方、有識者会議などで改革に関わるのは「利益相反ではないか」と問われると、「そうは思わない。文科省に頼まれたからやってきた。決めるのではなく提案の会議だった」と答えた。
また、地域格差や経済格差の批判には「我々も議論してきたが、これは文科省と業者の問題。決定が遅れた大学の責任もある」などと語った。
前半の講演では「英語教育改革の行方」と題して、学習指導要領にのっとり「統合的な言語活動」を行っている学校で英語力の向上が見られること、知識に頼らず自分で考え"Yes, I can."と言える、自信を持って生きていける子どもを育てることの重要性を強調した。
ゲスト / Guest
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吉田研作 / Yoshida Kensaku
日本 / Japan
上智大学特任教授 / Project Professor,Sophia University
研究テーマ:英語教育改革の行方
研究会回数:1