2019年11月12日 16:00 〜 17:00 9階会見場
「連合30年」(1) 篠田徹・早稲田大学教授

会見メモ

最低賃金は先進国で最低水準、非正規雇用者は労働者全体の4割を占めるなど、日本の労働環境は依然厳しい。連合が11月21日に発足30年を迎える機会をとらえ、シリーズ「連合30年」では連合の今後のあり方を多角的に考える。

第1回は労働政治を専門とする篠田徹教授が登壇し、「新たな社会契約締結のファシリテーター 連合30年が残したもの」について話した。

篠田教授は「労働問題は個人ではなく国の責任。懸命に働く人を社会全体で支えると国が示し、その実現に政府、労使が協力することが必要」と指摘。連合は「社会運営の中核的担い手として、主要政党とパイプを持ち、どの政権であっても重要政策に関与する責任がある」と強調した。

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 

シリーズ「連合30年」

(2)   神津里季生・連合会長    11月15日(金) 14:00〜15:00

(3)   中北浩爾・一橋大学大学院教授   11月21日(木) 15:00〜16:00


会見リポート

連合は「新たな社会契約締結の調整役に」

矢澤 秀範 (毎日新聞社くらし医療部)

 結成30年を迎えた連合は「労働者の生活改善」を掲げ、非自民勢力による政権交代を2度実現してきた。一方、労働者を取り巻く環境が大きく変化する中、労働条件の改善や雇用の確保などナショナルセンターが担うべき役割を果たしてきたかは疑問が残る。働き方の多様化に対応し、国民から共感を得られる活動を展開することが求められている。

 篠田教授は連合が「新たな社会契約締結の調整進行役」となることを求めた。1930年代の米国政府による「ニューディール政策」が働く人たちに希望を与えたことを例に、国が責任を持って政策を打ち出し、労使の代表が実現に向けて協力することの必要性を説いた。そこには30年間の運動で培ってきた連合の「コミュニケーション力とコラボ力」が生かされるという。主要政党のみならず、都道府県や地域協議会レベルで続けている政策制度要求を評価。強いパイプを生かし、他団体と連携するのも手だとした。

 現代の労働世界では、トータル的な危機への自己責任の限界があるという。米国の最低賃金時給15ドルに引き上げる運動を例に、社会が労働世界に介入を強めているのが世界的傾向だと分析。人生100年時代では働き方改革を「生き方改革」と捉え、企業だけでなく社会で支えていくための議論が必要だと訴えた。

 不安定な雇用関係として注目を集める料理の宅配代行サービスなど労働世界の既存概念は変化している。非正規労働者は約4割に達し、集団的労使関係に守られない人が増えている。連合が影響力を失った要因の一つに、非正規の組織化が遅れたことが指摘されている。「非典型の声や利益をどうやったら代表できるのか、今まで以上に創造的なアイデアを出さないといけない」と篠田教授。「正社員も労働組合も自分たちのこととして真剣に考える段階にきている」と投げかけた。


ゲスト / Guest

  • 篠田徹 / Toru Shinoda

    日本 / Japan

    早稲田大学社会科学部教授 / professor, Waseda University

研究テーマ:連合30年

研究会回数:1

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