2019年02月22日 13:00 〜 14:30 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(21) 文聖姫・ジャーナリスト

会見メモ

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

『麦酒(ビール)とテポドン』(平凡社新書)


会見リポート

北朝鮮の市場化と富裕層の知られざる姿

塚本 壮一 (NHK解説委員室解説委員)

 北朝鮮の人たちの中に入り込み、焼酎を酌み交わしながら取材と調査を進めたのが文聖姫さんだ。朝鮮総連の機関紙の記者として、その後は研究者として北朝鮮の各地を訪れた。世界中で文さんでしか語れないことを、興味深い写真とともに紹介してくれたのだから、話に引き込まれないわけがない。文聖姫さんが明かしたのは、大胆に市場化を進める北朝鮮のいまと、新興富裕層の知られざる姿である。

 1990年代の食糧危機で発達したヤミ市は、国が認めた「地域市場」に発展し、いまや路地裏やアパートの庭にも小規模の市場があるという。財布に100ドル相当のお金しかなかった女性が商才を発揮してホテル経営者になったとか、朝食を自宅に配達させるような金持ちも出現したといった、現地でしか聞けない情報も語ってくれた。そうした新興富裕層は、アパートの建設費用の一部を負担する代わりに、住宅の売買を許されるなど、権力側と持ちつ持たれつの関係にあるという。そうであれば、金正恩委員長は経済発展と国民への統制を両立できると自信を持っていることだろう。

 金委員長は経済改善に向けたマインドを持っており、非核化への確かな意志があるというのが文さんの判断だ。一方で、国際社会による経済制裁は効いていないと見る。これらの問題に対する金委員長の意識や判断は、ベトナム・ハノイで行われる2回目の米朝首脳会談とその後の両国の関係にどのように影響していくのだろうか。

 質疑応答で文さんは、「北朝鮮の人たちも戦争がないことを望んでいるはず」と語った。北朝鮮での日本に対する見方を問われた際も、「日本製品へのリスペクトや憧れがあると思う」とだけ述べ、北朝鮮国民が抱いているだろう日本への恨みなどには触れなかった。ひとりの在日として、「祖国」を真摯に見つめるだけでなく、そこに住む人々の安寧を願い、日朝関係の現状に心を痛める姿が印象的だった。


ゲスト / Guest

  • 文聖姫 / Mun Song Hui

    ジャーナリスト

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:21

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