会見リポート
2018年10月31日
13:00 〜 14:00
10階ホール
玉城デニー・沖縄県知事 会見
会見メモ
司会 伊藤雅之 日本記者クラブ企画委員(NHK)
会見リポート
知事が辺野古に座り込む日
大石 格 (日本経済新聞社上級論説委員)
自分がそうするといったわけではない。あくまでも妻が聞かれて、そう答えたという話である。だが、いまの政治状況を考えれば、そのエピソードをわざわざ紹介するというのは、自身の決意の間接的な表明だと受け止めるのが自然だ。
妻への問いは「大浦湾に土砂の投入が始まったら、座り込みに参加しますか」というものだ。即答したそうだ。「座り込みます」と。
ちなみに翁長雄志前知事は亡くなる前、樹子夫人にこう約束していたという。「万策尽きたら夫婦で一緒に座り込もう」と。
玉城氏の口からは「非暴力」「不服従」などの単語も出た。ガンジーを連想させる。辺野古のゲートの前で、東京や大阪から来た機動隊員に知事夫妻がごぼう抜きにされていく姿が脳裏をよぎった。
日本の政治において、国と地方がここまで対立したことはない。まるで「沖縄は日本ではない」と安倍政権が認めているかのようだ。
「基地が撤廃された場合、琉球の生活は再び芋と魚に依存したはだしの生活に戻るだろう」。米統治下でアンガー高等弁務官は米軍への服従を求めた。玉城氏は米軍用地が返還され、商業地などになった場合との比較をこう説明した。「直接的な経済効果は28倍、雇用は72倍」。もはや迷惑施設を甘受するほど貧しくはないということだ。
玉城氏には工事を止める法的手段はほとんどない。世界に移民した40万人のウチナーンチュのネットワークによる国際世論への働きかけ、県がアジア諸国を招いてサミットを開催、などのプランが披露された。政権シンパに多い中国陰謀論を加速させるだけかもしれない。
その先にあるのは……。タレント出身の玉城氏は終始、笑顔だった。その明るさに日本は甘えてよいのか。沖縄の人はすぐ踊り出すが、楽しいから踊っているとは限らない。
ゲスト / Guest
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玉城デニー / Denny Tamaki
沖縄県知事 / Okinawa Governor