2018年10月10日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(16) 金大中・元韓国大統領3男、金弘傑氏

会見メモ

金大中氏の三男で、民族和解協力汎国民協議会の常任議長を務める金弘傑氏が、父が宣言にかけた思いを振り返り、新しい日韓パートナーシップの提言を行った。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

父の遺業を継いで―日本そして北朝鮮

阪堂 博之 (共同通信社放送報道局委員)

 韓国・金大中元大統領の三男。父と小渕恵三元首相が1998年に署名した日韓共同宣言から20年というタイミングでの登壇だったが、北朝鮮関連に半分以上の時間が割かれた。父が2000年に分断史上初の南北首脳会談を実現したというだけではない。自身も9月に文在寅大統領の随行員として訪朝したばかりだ。

 父を「誰よりも強い信念の平和主義者」だとし、父の「信頼を基本に名分を重視しながら対話で解決しなければならない」という言葉を紹介しながら日韓や南北の関係について見解を披露した。

 「日韓共同宣言の趣旨は今も有効だ」と強調したが、現在の日韓関係がこの20年間で悪化したことは認めた。「韓国側にも難しい点がある」とし「下手に国民感情を刺激してはいけないので(韓国政府は)慎重になっている。国民感情に敏感にならざるを得ない」という。

 日韓に比べ、南北関係の行方には楽観的だった。北朝鮮の金正恩委員長が①幼い頃から長く外国生活を経験した②若くして権力を継承した―などの点で父の金正日総書記とは異なると指摘。北朝鮮を「普通の国家」、経済発展した富強国家にしようという強い意志と高い理想を持っている人物だと分析した。金正恩氏に2度会ったことのある人ならではの評価だが、とりわけ「理想主義的」と評したのが印象に残った。

 権力継承以降7年間で幹部の世代交代が進められており、かつての元老や党幹部に代わり、若く有能で国際感覚や新しい考えを持ったエリート層が登用されていると明かした。

 そうした幹部らと接触した結果、北朝鮮には日朝関係改善の準備がある、拉致問題解決にも積極的意思を持っている、と感じたという。ただ、拉致問題は敏感なので日朝2国間による「静かな外交」が必要で「互いのメンツをつぶさないよう交渉することが望ましい」と語った。

 「父ができなかった朝鮮半島の平和を達成したい」。遺業完遂への強い意志と背中に負ったものの半端でない重さを思った。その重さは、あるいは金正恩氏とも共通しているのかもしれない。


ゲスト / Guest

  • 金弘傑 / Kim Hong Gul

    韓国 / Republic of Korea

    民族和解協力汎国民協議会常任議長 / chairman, Korean Council for Reconciliation and Cooperation

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:16

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