2018年08月24日 15:00 〜 16:30 10階ホール
「2年目のトランプ政権」(5) 飯田敬輔・東京大学教授

会見メモ

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

米政権の貿易政策を3つの視点で分析、「対応は十分可能」

奥野 伸 (時事通信社経済部)

 中国との制裁関税の応酬、日本製の自動車・自動車部品への関税引き上げ検討など就任2年目に入り、「アメリカ第一主義」を謳い保護主義的な貿易政策を次々に繰り出すトランプ米大統領。米国内の産業にも打撃を与えかねないことから「支離滅裂」などと批判もつきまとうトランプ政権の貿易政策を、飯田敬輔氏は「あえて3つにとぎほぐす」ことでその実態に切り込んだ。

 その特徴の第1は、中国・メキシコ両国からの輸入品への高関税課税にトランプ氏が大統領選中に言及したことに象徴される「保護主義」。米国の貿易政策の歴史の中で何度も台頭しきたもので、飯田氏は議会よりも大統領府のほうが一段と保護主義的であることがトランプ政権の特徴と指摘した。

 第2に米通商法301条発動をちらつかせて貿易相手国に譲歩を迫る「強制外交」。そして実際はなにも実行してないが「自由貿易主義」を飯田氏は挙げた。実際、トランプ政権は通商政策報告や日米首脳会談などの機会を通じて市場開放を求めたり、関税・非関税障壁・補助金の全廃に言及したりはしている。

 飯田氏は「大変複雑だが、3つぐらいに分解すればこれまでの(米国の)政権とやってきたことと共通する点は多い」と明言。日本は過去に米国との貿易摩擦をその都度乗り切ってきた経験もあり、対日自動車関税発動時の対抗策の必要性には触れつつも、「(トランプ政権への)対応は十分可能だと思う」との見通しを示した。

 一方、白熱する米中貿易戦争についても取り上げ、米国の究極的な狙いには中国が掲げる産業政策「中国製造2025」の抜本的見直しがあると強調。この要求に中国は一歩も退かない構えで、今後の対立長期化が予想される。また機会があれば、この点について飯田氏から詳しくお話を伺いたいものだ。


ゲスト / Guest

  • 飯田敬輔  / Keisuke Iida

    東京大学法学部・大学院法学政治学研究科教授 / prof., Univ. of Tokyo Faculty of Law, Univ. of Tokyo Graduate School for Law and Politics

研究テーマ:2年目のトランプ政権

研究会回数:5

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