2018年06月29日 14:00 〜 15:30 10階ホール
「公文書管理を考える」(6) 片山善博・元総務相

会見メモ

自治官僚、県知事、大臣の経験から公文書管理について話した。財務省の文書改ざんについて「本来、文書に非常にこだわる体質の財務省が改ざんをするとは、かなりの圧力が働いたのでは」。「公文書改ざんは役人の世界の出来事、としているが実は上に立つ政治家の責任問題。担当大臣が、知らなかった、指示していないで済ませるのはその自覚が足りない」と批判した。

 

司会  川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)

 


会見リポート

トップリーダーの責任大きい

大西 直人 (西日本新聞社論説委員)

 公文書管理は情報公開とともに民主主義を支える両輪とされる。その両輪に旧自治省職員、鳥取県知事、菅直人内閣の総務相として携わった経験から、片山善博さんは「公文書の適切な管理は政治家の責任が大きい」と語った。

 端的に言えば、トップリーダーの姿勢だという。「『公文書はきちんと残してくれ。いずれ公開されたときに困らないよう公正な仕事をしてくれよ』と官僚に言える人が上に立てば、霞が関も自治体も変わる」と強調した。

 旧自治省では文書作成の訓練は随分したというが、上司からわざわざ「改ざんするな」と教えられたことは一度もなかったそうだ。それが常識だったという。今回の公文書改ざんなどについては「尋常なことではないし、官僚に改ざんなどさせないのが政治家の責任」というのが片山さんの感想だ。

 ところが改ざん、隠蔽、勝手な廃棄とでたらめな公文書管理が次々に露見する安倍晋三政権では、首相をはじめ「私は知らなかった」「私から指示された人は一人もいない」と責任を官僚だけに押し付けるリーダーが目立つ。片山さんの「役所に適切な公文書管理を徹底させる責任の自覚がなく、公文書に対して冷笑的態度が強い」との指摘にはうなずくしかない。

 国の公文書行政を正すにはどうするか。第三者委員会の権限強化などを挙げる一方、片山さんは「どんなにいい制度を作っても、運用する人たちの意識が行き届いていないと、制度はもろい」とくぎを刺した。

 ところで、自治体の公文書管理もお寒い状況にある。総務省の調査では昨年10月現在、条例で公文書管理を規定する自治体は全国1788団体のうちでわずかに21、公文書館設置は138にとどまる。財源や専門職員の採用がネックだ。片山さんは「当面は公共図書館で受け持ったらどうか」と提言した。


ゲスト / Guest

  • 片山善博 / Yoshihiro Katayama

    日本 / Japan

    元総務相、前鳥取県知事 / former Minister for Internal Affairs and Communications / former Governor of Tottori Prefecture

研究テーマ:公文書管理を考える

研究会回数:6

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