2018年08月22日 17:30 〜 19:25 10階ホール
試写会「判決、ふたつの希望」

会見メモ

公式サイト

 8月31日から全国で公開

©TESSALIT PRODUCTIONS – ROUGE INTERNATIONAL

第74回ベネチア国際映画祭最優秀男優賞受賞、第90回アカデミー賞外国語映画賞ノミネート作。

 


会見リポート

レバノンの深層描く

 中東で起きていることは、日本人には分かりにくい。とりわけレバノンは最も複雑な国だと言っていいだろう。なにせ公認されているだけで18もの宗派が存在し、協力したり対立したりしているのだ。

 レバノンに暮らす人々が抱える心の傷を描いたこの作品は、レバノン内戦とパレスチナ問題を理解する助けになる。しかも、それを良質なエンターテインメントに仕立てたジアド・ドゥエイリ監督の手腕は見事だ。

 舞台は首都ベイルートの住宅街。違法建築の補修作業を行っていたパレスチナ難民の現場監督ヤーセルと、住民のトニーが口論になる。

 ヤーセルがバルコニーからの水漏れを防ぐために取り付けた配水管をトニーがわざと壊し、ヤーセルが悪態をつく。トニーはマロン派キリスト教徒で、もともとパレスチナ人に反感を持っているのだ。

 上司に促されてしぶしぶ謝罪に訪れたヤーセルに対し、トニーは「シャロンに抹殺されていればよかった」と言い放つ。ヤーセルは思わずトニーの腹にパンチを見舞い、あばら骨を折ってしまう。

 1975年から15年続いたレバノン内戦は、ヨルダンを追われたパレスチナ解放機構(PLO)がベイルートに本部を移したことが背景にある。トニーらレバノン人からすれば、イスラエルとの争いをよそから持ち込まれたという思いがある。

 一方、パレスチナ難民にとってイスラエル国防相だったシャロンの名前は恐怖と怒りの代名詞だ。82年にシャロンはレバノン侵攻を指揮し、そのもとでパレスチナ難民の大虐殺が起きる。手を下したのはマロン派キリスト教徒の民兵組織だった。

 2人の争いは法廷に持ち込まれ、社会を分断する騒動に発展する。生身の人間同士なら和解できても、集団対集団になると歯止めがきかなくなる恐ろしさ。いま世界が直面する普遍的なテーマも見え隠れする。


朝日新聞社論説委員  平田 篤央

ゲスト / Guest

  • 判決、ふたつの希望

    The Insult

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