2018年07月05日 13:30 〜 15:00 9階会見場
「2年目のトランプ政権」(4) トランプとメディアの不思議な関係 石澤靖治・学習院女子大学教授

会見メモ

ニクソンやクリントンが現役大統領時代にとったメディア対応と比較しながら、「トランプとメディアの不思議な関係」と題して、現状を分析した。「オルタナティブ・ファクツ」がこの政権を理解するためのキーワードとする。自分たちの考える「真実」と主要リベラルメディアが報道する「事実」とのせめぎ合いが続いているという。行く着く先は、米国社会のさらなる分裂を招くものになるとも。

 

『トランプ後の世界秩序』

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)


会見リポート

メディア対応、ニクソンと類似

大内 佐紀 (読売新聞社調査研究本部主任研究員)

 トランプ米大統領と米国の主流派メディアとの対立は激化する一方だ。石澤教授は、トランプ政権には、明らかに事実とは異なる大統領の発言を「alternative facts(もう一つの事実)」と強弁する体質があると指摘する。実際には数十万人単位だった大統領就任式の人出を、トランプ氏が「100~150万人」と主張したことを釈明する際、コンウェイ大統領顧問が使った造語だ。

 石澤教授はそんなトランプ政権のメディア対応に、ニクソン政権との類似を見る。大統領がメディアを敵視し意図的にその権威失墜を狙い、弾圧し、バイパスするような形での直接情報発信を多用した点だ。教授によるとニクソン大統領は1969年1月から74年8月までの在任中、実に37回、国民向けテレビ演説を行った。時代の流れに対して不満をくすぶらせていた「サイレント・マジョリティー(声なき大衆)」に直接、訴えかける試みだ。

 これが功を奏したのか、ニクソン氏は地滑り的大勝で再選された。しかし、その後まもなくウォーターゲート事件への関与追及が本格化し、任期途中での辞任を余儀なくされる。

 かたや就任からまもなく1年半になるトランプ氏。最近では1日5、6回も更新されることがざらの公式ツイッターでは事実誤認や、もしかしたら意図的な虚偽、メディア批判が恒常的に垂れ流される。

 インターネットの普及でメディアも多様化し、人が自分が見たいと思うようなニュースだけを選択的に見るようになった時代、トランプ氏の岩盤支持層は大統領が何をしようと離れない傾向が続く。

 トランプ政権の今後で、一つ確実なのは、米国の分裂が深刻化すること。石澤教授はそう締めくくった。


ゲスト / Guest

  • 石澤靖治 / Yasuharu Ishizawa

    日本 / Japan

    学習院女子大学教授 / professor, Gakushuin Women's College

研究テーマ:2年目のトランプ政権

研究会回数:4

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