2018年06月07日 13:30 〜 14:30 9階会見場
「公文書管理を考える」(5) 加藤丈夫・国立公文書館館長

会見メモ

「公文書管理で、日本は1周2周遅れ。今やるべきは、研修と専門家の育成。アーキビストの資格をつくり、目指そうという人を増やしたい」と力を入れる。

一連の問題で「公文書」という言葉が人口に膾炙したが、「就任する時は、妻に公文(くもん)学習塾の先生になるの?と言われた」と苦笑い。「館長というより広報部長のつもりで取り組んできた」と。

 

国立公文書館

 

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

人とカネかけ記録文化養成を

青島 顕 (毎日新聞社社会部)

 公文書管理に対して、国は人とカネの投下をいかに怠ってきたか。加藤氏の話を聞いて痛感した。

 国の省庁は年間約350万冊文書ファイルを作成し、1年~30年の保存期間を設定。保存期間満了後に廃棄するか、公文書館などに移して保管するのかを決める。その判断の妥当性を内閣府公文書管理課がチェックした後で、国立公文書館が二重にチェックし、年間約5000件について異議を申し立てるという。加藤氏は「内閣府公文書管理課は20人体制だが、専門家はほとんどいない」と指摘し、専門家のいる公文書館の役割の重さを強調した。

 国立公文書館の担当職員はデータ化された文書ファイルのリストをパソコン上でにらみ、作成部署やファイル名の付け方を手掛かりに点検する。1人当たり年間約20万件処理する必要があるから、担当職員は残業を余儀なくされているという。

 加藤氏の話は文書管理の専門家(アーキビスト)の養成の重要性を説いた場面でさらに熱を帯びた。国立公文書館のアーキビストは現在30人。東京五輪・パラリンピック後に着工を見込む東京・永田町の新館完成までに150人に増員し、中央官庁に各1人、地方にも配置したいという。公的な資格制度の導入の必要性にも言及した。「陸上のトラック競技にたとえれば欧米に1周も2周も遅れている。10年以内に追いつくためにエネルギーを費やしたい。それが国民の行政への信頼につながる」

 森友・加計学園、自衛隊の日報問題と公文書の信頼を揺るがす事態が次々に起きている。政府・与党は改革の必要性で声をそろえるが、実効性が上がるのかは不透明だ。

 本物の改革を実現させるには、証言より記録を信頼する文化を作り、それを人とカネをかけて育てることが必要だろう。企業経営者出身で、行政に対して第三者の視点を持つ館長がいま果たすべき役割は大きい。


ゲスト / Guest

  • 加藤丈夫 / Takeo Kato

    日本 / Japan

    国立公文書館館長 / President, National Archives of Japan

研究テーマ:公文書管理を考える

研究会回数:5

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