会見リポート
2018年06月07日
16:00 〜 17:30
9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(8) 礒﨑敦仁・慶応大学准教授
会見メモ
司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
彼らなりの戦略性、合理的判断
服部健司 (時事総合研究所代表取締役)
北朝鮮が核・ミサイル実験に突っ走っていた昨年、ミサイルを抱いた金正恩委員長とトランプ大統領がにらみ合う欧米の風刺漫画があった。
金正恩「気をつけろ。オレは危険な人間だ。何をやるかわからないぞ」
トランプ「オレもそうだ」
礒﨑氏の話を聞いた後では、このステレオタイプの金正恩観は修正しなければならないだろう。
北朝鮮の分析に定評のある礒﨑氏が再三強調したのは、「北朝鮮は戦略性をもち、彼らなりの合理的判断に従ってものごとを動かしている」という点だ。それを前提にすれば、金正恩は「核保有のメリットとデメリットをきちんと考えている」という。
金正恩にとって祖父と父が計70年守り抜いてきた体制を温存するのが至上の任務。そのために制裁と孤立に屈せず、核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)完成へこぎ着けた。これを放棄するはずがない、という見方が多いが、礒﨑氏の見方は少し違う。
「核は目的ではなく、あくまで手段」なのだから、金正恩は体制が保証されるなら取引材料にできると考えているとみる。しかも、米国に取引に応じる大統領が誕生した。韓国には北の論理に理解を示す政権ができた。しかも米韓は人権改善など体制改変を求めていない。こんなチャンスは今後何十年もないだろう。取引するなら、時は今ではないか。
金正恩の思考を読み解いた礒﨑氏が下した判断は「核を簡単に手放すつもりはないが、手放す用意は考えている」。シンガポール会談直前の会見なので「慎重にならざるを得ない」と言いながら、この点はかなり踏み込んでくれた。「労働新聞」など公式メディアの綿密フォローに裏打ちされた見立てだろう。
ただし、礒﨑氏が指摘する最大の不確定要素は「予測不能」を看板にするトランプその人だ。金正恩カラーである①スピード感②実用主義③プロセス重視―がトランプ大統領にすんなり通用するかどうか。
ゲスト / Guest
-
礒﨑敦仁 / Atsuhito Isozaki
慶應義塾大学准教授 / Associate Professor, Keio University
研究テーマ:朝鮮半島の今を知る
研究会回数:8