2018年05月30日 10:30 〜 12:00 10階ホール
「朝鮮半島の今を知る」(7) アンドレイ・ランコフ 韓国・国民大学教授

会見メモ

ランコフ氏は北朝鮮の金日成総合大学への留学経験があり、『北朝鮮の核心――そのロジックと国際社会の課題』など北朝鮮関連の著作も多い。

「市民の生活は向上している。地方も向上しているが平壌のスピードとは差があり、地方と平壌の格差は広がっている」「金正恩が選ぶ道は<開放なき改革>しかない。生活水準の向上で民心をつかみながら、韓国の現状を民衆が知ることのないよう政治的な締め付けは強化せざるを得ない」「トランプ米大統領の出現で<米国の先制攻撃はない>という前提が崩れた」と、5月に訪朝した際の写真をまじえながら現状を分析した。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)

通訳 李希京


会見リポート

「北朝鮮は核を放棄しない」 貴重な現地最新報告も

五味 洋治 (企画委員 東京新聞論説委員)

 アンドレイ・ランコフさんと直接お会いするのは初めてだったが、声には以前からなじみがあった。というのは、私がほぼ毎日聞いている、米国の対北朝鮮放送「自由アジア放送」の、レギュラーコメンテーターだからだ。

 彼の分析は、他の専門家とは一線を画している。まず、平壌にある名門、金日成総合大学に1年間留学した経験があり、北朝鮮の社会の仕組みや、現地の人たちの思考方法を知悉しているということだ。

 さらに同じ社会主義国、旧ソ連出身であることも強みとなっている。

 北朝鮮が持つ体制の矛盾を厳しく指摘し、一方、北朝鮮の中で起きている変化を、ソ連の崩壊過程と比較して論じる。ランコフさんにしかできないことだ。

 訪日の機会に、会見をお願いしたところ、最近訪朝したばかりなので、その時の話もしたい、写真もお見せしたいとのことだった。

 写真は、資本主義の要素を取り入れて発展する平壌や、開発が遅れた地方の様子が分かる、貴重なものだった。中でも個人が始めたという乗り合いバスの写真には驚いた。北朝鮮ではこういった個人ビジネスが盛んになっていると聞いていたが、写真で見たのは初めてだったからだ。

 また話も、豊富な学識と経験に裏打ちされた、説得力のあるものだった。要約すれば、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長は経済発展のため「対外開放なき改革」を進めようとしているが、北朝鮮への武力攻撃もいとわないトランプ米大統領の登場に危機感を抱き、仕方なく首脳会談を計画した。しかし、北朝鮮は核・ミサイルの完全な放棄には応じない。放棄は「自殺行為」と考えているからだ。トランプ大統領の任期をにらみながら、時間稼ぎを行うだろうというものだった。

 私はもう少し楽観的な見方をしていたが、彼の話を聞いて、考えを変えなくてはならないと感じた。


ゲスト / Guest

  • アンドレイ・ランコフ / Andrei Nikolaevich Lankov

    ロシア / Russia

    韓国・国民大学教授 / Professor, Kookmin University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:7

前へ 2024年03月 次へ
25
26
27
28
29
2
3
4
5
9
10
11
12
16
17
20
23
24
30
31
1
2
3
4
5
6
ページのTOPへ