2018年01月23日 14:45 〜 16:15 9階会見場
研究会「トランプ政権1年の評価」(1) 西川賢 津田塾大学教授

会見メモ

トランプ政権の特徴として「統治より選挙を重視」「全体より支持母体の利益を体現」「大統領令の濫用」の3点を指摘。外交については「大きな緊張を伴った現状維持」と表現。「米国は分断の歴史そのもの。分断を克服する過程で民主主義が発展してきた」とも。

西川賢氏ウェブサイト

ビル・クリントン--停滞するアメリカをいかに建て直したか』

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 


会見リポート

「媚びる政治」と「軸のない政策」

佐藤武嗣 (朝日新聞社編集委員)

 トランプ政権が誕生して1年が経った。米国で何が起き、どこへ向かうのか、西川賢氏が分析した。

 米国では社会やイデオロギーの分断が進み、大統領候補者も「統治」より選挙自体が目的化している政治風土が横たわる。トランプ大統領が誕生した背景として、主にこの2つを西川氏は挙げた。これはオバマ前政権含め、米国政治の近年の傾向だとし、トランプ氏はその顕著な例だという。

 トランプ氏の政治手法は、米国人民全体の代表者ではなく、部分利益の代弁者として振る舞い、「反対勢力を一顧せず、再選のカギを握る献金者や特殊勢力に媚びる」のが特徴で、政策ではオバマ路線を徹底的に否定するアプローチをとっていると指摘する。

 内政・外交の評価について、西川氏は「緊張を伴った現状維持」と表現した。

 移民政策に寛大なオバマ氏に反発して「メキシコ国境に万里の長城を築く」と強弁したが、構想は宙に浮いたまま。イランの核合意に強い不満を表明しつつ、具体的な政策はとれない。対北朝鮮でも「戦略的忍耐」を否定しながら様子見が続く。基本的にトランプ氏に政策の理念や軸があるわけではなく、政策の「現状維持」が続くが、「自分ファースト」のトランプ氏がどう動くのか予測不能な「緊張」があるという。

 緊張といえば、北朝鮮に対して米国が軍事行動を起こすのかどうかが注目される。内政に行き詰まった時に、外に国民の目を向けさせるのは権力者の常套手段。「ロシアゲート」では周辺や自身に徐々に捜査が迫る。

 西川は、今年11月の中間選挙では共和党が多数派を維持するとの予測が多いとしながら、もし民主党が多数派を握れば、米議会とホワイトハウスの対立が深まり、「政治がより一層停滞し、大統領は北朝鮮に強硬な動きに出るかもしれない」との懸念を示した。

 ただ、西川氏は米政治の行方について悲観していない。「米国の歴史は、分断を乗り越えて克服していく過程で民主主義がより発展してきた。この1年だけ見ると悲観的な結論にたどりつくかもしれないが、これは米社会が新しく問題を克服し、民主主義をより強くしていく契機にあたるものだろう」と語ったのが印象的だった。


ゲスト / Guest

  • 西川賢 / Masaru Nishikawa

    日本 / Japan

    津田塾大学 教授 / Prof. Tsuda University

研究テーマ:トランプ政権1年の評価

研究会回数:1

ページのTOPへ