会見リポート
2017年03月10日
14:30 〜 15:30
10階ホール
「チェンジ・メーカーズに聞く」(18)宮坂学 ヤフー社長
会見メモ
「週休3日制」や「どこでもオフィス」など働き方改革を率先する同社の制度や取り組みについて語った。「社員の幸せと利益向上を両立させたい」。
司会 安井孝之 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
会見リポート
働き方のアップデートを発信したい
長友 佐波子 (朝日新聞出身)
アップデート。それがヤフー!ジャパンのビジョンという。宮坂学社長は自社を「働き方のアップデートの発信地にしたい」と意気込む。疲れ切っている日本人の働き方をテクノロジーで解決したい、それが生産性の向上にもつながる、と見る。
会見で宮坂社長が繰り返したのは、「テクノロジーによる」働き方の変革だ。例えば、昨年10月から社員の新幹線通勤を解禁した。満員電車に揺られるより、はるかにストレスは低い。実際に軽井沢から新幹線で通う執行役員もいるという。パソコンがあれば、座れさえすれば、通勤時間も貴重な労働時間に変えられる。
根底には、職場は、本社というリアルな場所ではなくクラウド上にある、という考え方がある。だから、時間にも場所にも縛られない。この延長に、すでに報道された「どこでもオフィス」や、今後の挑戦として掲げる週休3日制がある。前者は、月に5日、会社でも自宅や喫茶店でも、好きな場所で働ける制度だ。子育てと両立しやすいと話題になった。
背景には、日本の労働者の生産性に対する危機感がある。人口の約半分が雇われ、その3割が疲れ果てている。労働時間の損失は大きい。宮坂社長は「これで景気が良くなるはずがない。労働者の心身状態の改善も、企業の役割ではないか」と話す。
現実には課題も多い。オフィスのクラウド化にはセキュリティーのコストがかかる。評価は適正にできるのか。みなが時間も場所も自由なら、どう突発事態に対応するのか。いつでも・どこでも働けると逆に、休日や時間外労働が増えるのではないか。働く場所を自由にした一方、週に1度の部下との個人面談を課された管理職は、負担が増しているはずだ。
それでも宮坂社長の挑戦を歓迎したい。少なくとも働き手は、時間・場所を含めて、どう働くかを考え直さざるを得なくなる。労働者自身の意識改革にもつながるだろう。
ゲスト / Guest
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宮坂学 / Manabu Miyasaka
ヤフー社長 / CEO, Yahoo Japan
研究テーマ:チェンジ・メーカーズに聞く
研究会回数:18