会見リポート
2015年02月23日
16:30 〜 18:30
10階ホール
研究会「慰安婦問題を考える」大沼保昭 明治大学特任教授、朴裕河 世宗大学教授
会見メモ
『帝国の慰安婦』(朝日新聞出版)の著者・朴裕河 世宗大学教授(中央)と『「慰安婦」問題とは何だったのか』(中公新書)の著者で「アジア女性基金」の設立と同基金の償いに携わった大沼保昭 明治大学特任教授(左)が慰安婦問題について語り、意見交換した。
司会 土生修一 日本記者クラブ事務局長
会見リポート
取り戻したい 関係改善に向けた意志
五味 洋治 (東京新聞編集委員)
今年は、日本と韓国が国交正常化を果たして50年となる。しかし、島や歴史認識をめぐる問題で関係はこじれ切ってしまっている。どうやら関係改善の糸口は、旧日本軍による従軍慰安婦問題への対応に収れんされてきた感があるが、ここからどうすればいいのかが見えてこない。
その意味で、この問題に長く携わってきた2人の話は貴重だった。会場はほぼ満員だったが、参加者も同じ思いだっただろう。
両氏とも「政府間で突然合意ができても両国の国民は納得しないだろう」「政治家には期待できない」と話したのが印象的だった。
その上で大沼氏は、日本側が設立したアジア女性基金の活動について、日韓のメディア、NGOが正当に評価しなかったと批判した。全てが納得する解決策はもう難しいものの、韓国の元「慰安婦」だけにとどまらず、世界中の「慰安婦制度」の犠牲者の名誉回復に向けて視野を広げることが必要だと投げかけた。考慮すべき指摘だと感じた。
朴氏は、逆に「日韓の問題にとどめておきたい」と述べた。教科書問題で行ったように、元慰安婦問題にさまざまな意見を持つ人たちが参加する「協議体」を作り、議論の中身を公開することを提案した。
それは、「日韓国交正常化まで14年かかったが、慰安婦問題は25年たっても解決できていない。せっかくなら欲張って両国の国民が新たな価値観を生み出し、日韓で共有したい」(朴氏)との思いからだ。
大沼氏も朴氏も、さまざまな反発、批判にさらされながらもシンポジウムなどを開き、著書を通じて理解を広げようと努力している。
その原動力は出口の見えない葛藤の中に積極的な意味を見いだし、関係改善につなげるという「強い意志」だろう。われわれも、今その姿勢を取り戻さなければいけない。
ゲスト / Guest
-
大沼保昭 明治大学特任教授、朴裕河 世宗大学教授 / Yasuaki Onuma, distinguished professor, Meiji University / Park Yu-ha, professor, Sejong University
研究テーマ:慰安婦問題を考える