会見リポート
2011年07月08日
13:30 〜 14:30
10階ホール
浅田次郎 日本ペンクラブ会長
会見メモ
日本ペンクラブ会長に就任した浅田次郎氏が記者会見し、ペンクラブの活動を話し、質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 井田由美(日本テレビ)
日本ペンクラブのホームページ
会見リポート
若い会員増やし活力あるクラブに
結城 公生 (京都新聞東京支社長)
阿刀田高さんからバトンを受け、日本ペンクラブの第16代会長に就任した。「歴代会長に比べれば若造」と語る59歳。「誰かがやらなければならない」と重責にも気負いはない。
英国に本部を置く国際ペンの日本センターとして1935年に創設され、作家や詩人、編集者、随筆家ら1860人の会員を擁する。初代の島崎藤村をはじめ、正宗白鳥、志賀直哉、川端康成ら日本を代表する文学者が会長を務めてきた。
「先人が築いてきたことを維持し、次の世代に引き継ぐことが大事」ときっぱり。戦争の悲劇を二度と繰り返さないとして創設された歩みを紹介しつつ、「平和の破綻は、言論・表現の封殺から始まる」と強調した。
「鉄道員(ぽっぽや)」で直木賞を受賞し、映画化、テレビ化された作品は多い。日本の大衆小説の伝統を受け継ぐベストセラー作家であり、「蒼穹の昴」など壮大な歴史小説に圧倒され、浅田ワールドにはまった読者も多いに違いない。
会社での労働組合や大学の自治会、それに地域のお祭りを支えている人たちといった「みんなのために無償で何かをする団体は必要」と訴える。「集団主義が良い意味で日本の文化をつくってきたのに、若い世代では希薄になっている」と残念がる。ペンクラブには「正当に議論する空気そのものが温存されている」ところが好きだという。「若い会員を増やし、みんなで考え、みんなで働く、活力のあるペンクラブにしたい」と、少し語気を強めた。
多岐にわたる質問は、沖縄返還の密約問題や大震災後の原発問題、昨今の政局にも及んだ。「紅旗征戎(こうきせいじゅう)わが事にあらずで、文学をやっている人が政治や政策を語るのは読者にとって興ざめ。でも、隠遁(いんとん)を決める小説家は好きじゃない」。そう前置きし、てらいなく持論を披露した。日本ペンクラブの新しい「顔」が紡ぎだす「言葉の力」に期待したい。ゲスト / Guest
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浅田次郎 / Jiro ASADA
日本ペンクラブ会長 / President, The Japan P.E.N. Club