会見リポート
2010年02月23日
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遊川和郎・北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授
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会見リポート
キーワードで読み解く異質大国
服部 健司 (時事通信外信部長)
豊富なデータ、適切な具体例、明快な語り口で説得力あふれる内容。わけても秀逸なのは、切れ味鋭いキーワードと独自の造語だ。これまで中国内にとどまっていた諸問題がグローバル化によって外部にあふれ出し、世界が共有せざるを得なくなった「国内問題の全球化」。愛国主義を奉じ、政権への忠誠心が強い若い世代の「新紅衛兵」。普通選挙や議会運営などの「民主主義コスト」が低いのが強みだったが、「全知全能の神」たる共産党も社会多元化に対応しきれず、上昇する「民主主義でない(ために支払わされる)コスト」。
中国は北京五輪開催や金融危機脱却で「中国モデル」に自信を深めたが、遊川氏は「普遍的な大義」を欠いていると説く。思わずひざを打ちたくなる指摘だ。筆者も北京駐在中、外国外交官などから「中国の発展は確かに目覚しいが、果たしてどれだけの国から尊敬されているだろうか」という疑問をよく聞かされた。
全球化時代になっても中国はなんら変わらない。国際社会が「大国にふさわしい責任を担うはず」と過剰な期待を寄せ、それが失望に変わっただけ。「経済レベルが上がれば民主化に向かう」という国際的経験則は通用しない。中国的価値観は成熟国家のそれと相容れない。こうした判断に立つ遊川氏によると「普通になれない大国」の苦悩はさらに深まりそうだ。その大国との共生を強いられる世界もまた。
ゲスト / Guest
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遊川和郎 / Kazuo YUKAWA
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授 / Associate professor of Hokkaido University graduate school media communications research academy