2024年03月28日 13:00 〜 14:30 9階会見場
「かかりつけ医を考える」英仏独の訪問調査から 森井大一・日本医師会総合政策研究機構主席研究員

会見メモ

日本医師会は昨年5月から6月にかけてイギリス、ドイツ、フランスの3カ国に調査団を派遣し、各国のかかりつけ医制度と同制度が新型コロナウイルス対応において、どのように機能したのかを調査した。

調査団の実務担当者である日本医師会総合政策研究機構の森井大一主席研究員が、結果や日本の医療体制を考える上で必要になる視点などについて話した。

 

※本日の資料はこちらからダウンロードしていただけます。

 

司会 猪熊律子 日本記者クラブ企画委員(読売新聞)


会見リポート

事実を検証して「日本型」模索を

前村 聡 (日本経済新聞社医療面編集長)

 「コロナ禍で欧州ではかかりつけ医は機能したのか」。日本医師会が2023年5〜6月に英国、フランス、ドイツの3カ国に調査団を派遣し、実務を担った日本医師会総合政策研究機構の森井大一主席研究員の結論は明快である。「登録制がある英国、フランスでは期待された役割を果たせず、登録制のないドイツは機能した」ということになる。

 なぜか。森井氏によると、英国のかかりつけ医(GP)は平時から医療以外の住居や雇用、孤独対策にも対応を求められていたことに加え、GP診療所の医師は「患者は(感染を)怖がって診療所を受診しなかった」と説明したという。フランスは第1波の際に政府が「かかりつけ医には行かないで。コロナが疑われる場合は15番(救急)に電話して」と指示した。その結果、両国ではコロナ患者が集中した病院に限局した医療逼迫が起き、機能不全に陥った。

 ドイツでは登録制はないものの、患者と信頼関係を築き、外来機能を果たす開業医がコロナ患者の「20分の19」(95%)以上を受け止め、病院機能を守る防御壁となった。需要計画に基づき診療科レベルで外来機能の均てん化が図られており、コロナでは診療科を問わず軽症患者を診療したという。

 フランスでは政府指示は1カ月余りで撤回され、かかりつけ医以外でも全額保険でカバーするようになり、日本型のフリーアクセスで乗り切ったと報告する。

 「日本にかかりつけ医制度があればコロナ禍で医療アクセスはもっと良かった」という見解に対する反証を示した。この日は3カ国の報告が中心だったが、日医総研の「欧州医療調査報告書 概要版」(2023年11月)では、診療拒否した医療機関や応召義務を緩和した政府対応など日本の課題にも踏み込んでいる。医療体制は国の歴史と文化を内包する。日本の対応も検証し、日本におけるかかりつけ医機能のあり方を深めたい。


ゲスト / Guest

  • 森井大一 / Daiichi MORII

    日本医師会総合政策研究機構主席研究員

研究テーマ:かかりつけ医を考える

研究会回数:10

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