会見リポート
2024年03月08日
15:00 〜 16:00
10階ホール
「2024 米大統領選」(1) 佐々江賢一郎・日本国際問題研究所理事長に聞く
会見メモ
米大統領選を展望するシリーズ企画「2024 米大統領選」の第1回ゲストとして元駐米大使で日本国際問題研究所理事長の佐々江賢一郎さんが登壇した。
「現時点で決め打ちはできない」と前置きした上で、トランプ前大統領、バイデン大統領を取り巻く課題、選挙戦の争点、トランプ第2期政権が誕生した場合の外交への影響などについて話した。
トランプ前大統領については「最大のアキレス腱は訴追裁判。特に議会襲撃事件を巡る連邦最高裁の決定がどのタイミングで出るのか」。トランプ前大統領による遅延戦術は「政治的勝利により法の上に立つという方針だろう。三権分立のチェック&バランスが崩れる可能性がある」。
司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
会見リポート
国家的危機には米国民団結
杉田 弘毅 (シリーズ担当企画委員 共同通信社特別編集委員兼論説委員)
シリーズ企画「2024 米大統領選」を始めた。
第一回は駐米大使としてオバマ(民主)、トランプ(共和)両政権と向き合った佐々江賢一郎氏。ウクライナやガザで戦争が続く混乱の世界で「この大統領選はさらなる世界のリスクになる懸念がある」との冒頭発言に、ぐっと引き付けられた。
もちろんトランプ氏当選の場合にアメリカ・ファーストに翻弄される悪夢が頭に浮かぶが、選挙の不正を訴えて起きる大規模な反乱も想定する必要があると言う。前回大統領選後の議会襲撃には驚愕したが、今回は州、議会を巻き込み周到に準備された暴力的な行動が起きるかもしれない。
そうなれば、米国は自ら民主主義を崩し道徳的なリーダーシップを失う。
それにしてもなぜまた共和党はトランプ氏なのか。答えは「彼は分かりやすい。高邁なことは語らないが、われわれの人だと思わせる」。少数派や移民が力を強める国で焦燥感を抱く大衆の心をつかむ技だ。
「もしトラ」に日本はどう対応すべきか。権威主義への好感、同盟不信、保護主義と不安材料は多い。
8年前に大統領に当選した時は「中国と日本は同じところに並んでいた」トランプ氏だが、今は違う。「自信をもって対応するべきだ」というアドバイスだ。
重要なのはレトリックに惑わされずに実際の行動で判断し、基本的価値観と異なる政策には同盟国として反対することとの指摘である。米政治潮流の変化に耐え抜く長期的なレジリエンスの必要性も唱えた。
今は悲観論ばかりの米国でも、「米国民は国家的危機には団結する」。「もしトラ」話が多かったが、「トランプ氏と決め打ちしているわけでない」と最後に付け加えた。
佐々江氏の希望で対談形式となった。和やかな雰囲気で話が深まり、濃厚な1時間だった。
ゲスト / Guest
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佐々江賢一郎 / Kenichiro SASAE
日本国際問題研究所理事長、元駐米大使 / President, The Japan Institute of International Affairs, Former Ambassador to the USA
研究テーマ:2024 米大統領選
研究会回数:1