2023年10月18日 11:00 〜 12:30 10階ホール
「ハマス・イスラエル衝突」(1) 錦田愛子・慶應義塾大学教授、鈴木啓之・東京大学特任准教授

会見メモ

イスラエル・パレスチナ問題を専門とする錦田愛子・慶應義塾大学教授(写真1枚目)、鈴木啓之・東京大学特任准教授が登壇。軍事衝突の背景と今後の影響などについて話した。

2氏はイスラエルによるガザ地区への地上侵攻を回避する落としどころは見当たらないとし、「不可避」との見方を示した。

 

司会 出川展恒 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

貧困・失業 奇襲の背景に

田所 眞帆 (時事通信社外信部)

 パレスチナ自治区ガザを実効支配するイスラム組織ハマスがイスラエルに奇襲攻撃を行った10月7日から11日目となる18日、鈴木特任准教授と錦田教授による会見が行われた。イスラエルによる地上侵攻が「いつ始まってもおかしくない」(鈴木氏)状況で、錦田氏が指摘する通り、開始は遅れているとの見方も出ていた。刻一刻と情勢が変わる中、両氏には的確な視点や知見を与えていただいた。

 鈴木氏によると、過去の地上侵攻は空爆開始から7~10日ほどで始まっていた。錦田氏は「人質の存在が侵攻を遅らせている」と指摘。イスラエルにとって多数の民間人を人質にとられたことは前例がない上、二重国籍や外国籍の民間人に危険がおよび、外交問題に発展することを懸念しているという。「人質の居場所をある程度把握できるまで、軍は侵攻を決断できないのでは」と分析した。

 ガザ地区では2007年以降、イスラエルが経済封鎖を続けてきた。鈴木氏は地区内の貧困率や失業率が極めて高いことを挙げ、「こうしたハマスを取り巻く環境が攻撃に至った背景の一つ」と説明した。ただでさえ厳しい環境を強いられてきたガザ住民は、7日以降、イスラエル軍の報復攻撃に加え、完全包囲による水や食料などの供給停止という人道危機にもさらされている。

 鈴木氏は「地上侵攻が始まっていないにもかかわらず、パレスチナ側の死者数は既に、少なくとも1993年のオスロ合意後で最悪だ」と強調。侵攻が開始されれば、さらなる犠牲者と被害が出るということだ。さらには、イスラエルによるガザの管理強化は不可避だとして、再占領の可能性も指摘した。

 鈴木氏は、オスロ合意後、国際社会が掲げた2国家共存を含む和平交渉の枠組みを再考するべきだという。日本を含め、各国は2国家共存への支持を改めて表明しているが、それだけではもう惨事を止められないのではないか。


ゲスト / Guest

  • 錦田愛子 / Aiko NISHIKIDA

    慶應義塾大学教授 / professor, Keio University

  • 鈴木啓之 / Hiroyuki SUZUKI

    東京大学特任准教授 / Project Associate Professor, The Sultan Qaboos Chair in Middle Eastern Studies, The University of Tokyo

研究テーマ:ハマス・イスラエル衝突

研究会回数:1

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