2023年04月26日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「人口減少 80万人割れの衝撃」 (3) 佐々井司・福井県立大学教授

会見メモ

人口動向や人口変動要因に関する定量分析を専門とする佐々井司・福井県立大学教授が、人口減少の現状、日本人の海外移住者の動向とその背景について、私見を交え解説した。

 

司会 小林伸年 日本記者クラブ企画委員(時事通信)

 


会見リポート

増える若者の海外流出/日本への諦め原因か

澤田 和樹 (共同通信社くらし報道部)

 日本の人口は2070年に3割減の8700万人になり、1割が外国人になる―。国立社会保障・人口問題研究所が4月に発表した将来推計人口で、改めて厳しい現実が突きつけられた。

 この発表直前、シリーズ企画「人口減少 80万人割れの衝撃」の第3弾として登壇したのが佐々井司・福井県立大教授だ。主に「外国人」「海外移住者」の視点で問題を解説した。

 佐々井氏によると、2021年の日本の総人口に対する外国人の割合は約2%。ただ、都道府県別の増加幅を見ると、外国人の存在感は一変する。2015年から2020年まで、大半の地域で日本人人口は大幅に減ったが、外国人は全地域で増えた。新型コロナウイルス禍により状況は一時的に変わったものの、佐々井氏は「既に日本の人口はかなり外国人に依存している」と言う。出生数が減り続ける中、外国人の存在感は増している。

 さらに注目すべきなのは、日本から海外に移住した「女性永住者」の増加だ。コロナ禍にも増え続け、直近は30万人を超えた。はっきりとした理由は分かっていない。「海外で出産する日本人が増えたのでは?」「外国人と結婚し、永住した人が増えたのでは?」といった答えは、統計を見ると明確な理由にはならないのだという。女性よりは少ないものの、男性の海外永住者も増え続け、20万人を超えた。佐々井氏は、ジェンダー格差や低賃金、雇用、年金への不安により「男女共に息苦しい社会で、将来に子どもを持とうという層が減っている。諦観を持って海外を目指す人がいるのかもしれない」と分析した。

 佐々井氏は「私見」と言うが、「若者の諦め」は大きなキーワードに違いない。どこに諦めの要因が潜んでいるのか。人口減に合わせた社会づくりと共に、若者の諦めの背景を探ることは、一つの処方箋になるかもしれない。


ゲスト / Guest

  • 佐々井司 / Tsukasa SASAI

    福井県立大学教授 / Professor, Fukui Prefectural University

研究テーマ:人口減少 80万人割れの衝撃

研究会回数:3

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