2022年11月28日 15:30 〜 17:00 10階ホール
「日本の安全保障を問う」(5) 川島真・東京大学大学院教授

会見メモ

アジア政治外交史、中国政治・外交を専門とする川島真・東京大学大学院教授が登壇。中国共産党大会後の中国政治、外交について話した。

 

司会 川戸惠子 日本記者クラブ企画委員(TBS)


会見リポート

対中政策の理念定まらぬ日本

吉岡 桂子 (朝日新聞社編集委員)

 「日本の対中政策は、何が理念なのか分からない。米国と同じなのか。明確な戦略が見えない」

 アジア政治外交史、中国政治・外交を専門とする川島真・東京大学大学院教授は冒頭、こう切り出した。

 米国は、中国だけを国際秩序に対する挑戦者とみなし、衝突を管理しながらも競争する戦略に転換した。

 「では、日本は?」と問う。

 「日本の安全保障を問う」シリーズ2回目に登壇した北側一雄・公明党副代表が「日本にとって最大の課題は中国との向き合い方だ」と断言したように、中国は日本の安保戦略の肝である。裏返せば、対中政策の理念が定まらなければ、安保戦略も定まりようがない。

 判断するには、日本は対中解像度を上げる必要がある。その材料として、川島氏は中国共産党大会後の中国について幅広く解説した。

 習近平体制が党中央を自派で固めて団結を説くのは、経済失速や米国をはじめとする先進国との対立を背景にした危機感の表れと分析する。

 質問が相次いだ台湾については、中国は2049年を目標に「戦わずして勝つ」とする基本線を、現時点で変えた痕跡はないとする立場だ。「能力+意思=武力侵攻」と考えがちな安保専門家と、目的達成に向けた中国の行動様式を知る川島氏ら中台専門家の見方の違いを指摘した。安保戦略の策定には、双方の専門家とも大事な存在だ。

 国立大学の教授が3年前、中国で当局から拘束される事件があった。自身へのサイバー攻撃だけでなく、中国人の教え子が帰国時に空港で、川島氏の動向を尋問されることまで起きている。「中国には行けない」と言うが、歴史をベースに今を読み解き、将来を見据えた分析は聞き応えがあった。会見はポーランドからの帰国翌日。第三国から見た日中関係のありようについても、話を聞きたい。


ゲスト / Guest

  • 川島真 / Shin KAWASHIMA

    東京大学大学院教授 / Professor, Department of International Relations, the Graduate School of Arts & Sciences, the University of Tokyo

研究テーマ:日本の安全保障を問う

研究会回数:5

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