2021年12月06日 14:00 〜 15:00 10階ホール
「アフガニスタン」(6) 阿部信泰・元外交官、元国連事務次長

会見メモ

元外交官の阿部信泰さんが「米軍のアフガニスタン撤退が米同盟国に与えた余波」をテーマに防衛のあり方、国際法からみた同盟の意義づけなどについて話した。

阿部さんは、駐サウジアラビア大使、駐スイス大使、国連事務次長(軍縮担当)などを務め、2008年に退官した。現在は日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センターの所長を務めている。

 

司会 杉田弘毅 日本記者クラブ企画委員(共同通信)

 

※本会見の動画はゲストの意向によりスピーチ部分のみです。


会見リポート

日米同盟維持には防衛力・経済力の堅持が必要

原田 健男 (元JNNカイロ支局長・山陽放送出身)

 8月末のアフガニスタンからの米軍の撤退は、予想外の混乱をもたらした。ガニ大統領ら政権幹部は早々に国外退去し、首都はあっという間にタリバンに占領されたため、NATO加盟国等各国のアフガニスタン人協力者等の国外避難で、空港周辺は大混乱となった。

 元国連軍縮担当事務次長で外交官歴40年の阿部信泰さんは、20年間のアフガニスタン駐留で米国民は厭戦気分に満ちており、混乱の中にも撤退を支持・歓迎していると述べる一方、米同盟国に与えた余波について解説した。台湾・韓国・日本など同盟国には米国が最後まで守ってくれるだろうかとの不安が出てきたのである。阿部さんによれば、米国の元統合参謀本部議長は今回のアフガニスタン政府軍の事例をあげ「戦う意思がなければ米軍は助けることはできないという教訓を深く考える必要がある」と指摘しているそうだ。

 日本については、中国から圧迫を受けている尖閣列島の例を出し、中国が攻めてきたらまず自衛隊が対抗する、それがあってこそ次に米軍に助けを求められるとの原則をあらためて確認した。堅固に見える日米同盟だが、米国民が日本を守るのに犠牲を払うのは嫌だといえば、大統領はそれを尊重しなければならないと阿部さんは言う。では、どうすれば米国は日本を守ってくれるのか? 阿部さんは3つ要素を挙げた。(1)自由民主主義等政治理念を共有し米国民が心情的にも日本を守るべきだと感じること(2)日本の経済・技術力・軍事的価値などから米国の防衛のために日本を保つ必要があると米国のエリート層が考えること(3)実際上、軍事的に日本を守ることが可能であること、である。阿部さんの話からは、日米同盟があるからと言ってそれに寄り掛かるだけでは、同盟の継続性に疑念が生じかねないことが伝わってきた。常に油断なく感性を磨いて、自主防衛や経済力維持、自由と民主主義・基本的人権尊重の堅持等に力を尽くすしかないようだ。


ゲスト / Guest

  • 阿部信泰

    元外交官、元国連事務次長

研究テーマ:アフガニスタン

研究会回数:6

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