会見リポート
2021年03月04日
11:00 〜 12:00
オンライン開催
「3.11から10年」細野豪志・衆議院議員
会見メモ
細野豪志・衆議院議員がリモートで登壇した。細野氏は菅直人政権で、東日本大震災後の東京電力福島第一原発事故対応に担当相として携わってきた。この経験をまとめた著書『東電福島原発事故 事故調査報告』が3月に出版された。細野氏は、処理水の海洋放出に向け政府がすべきこと、甲状腺がん検査のあり方、危機管理専門家の育成の必要性など、6つの提言について話した。
司会 瀬口晴義 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)
会見リポート
「政府は処理水の放出決断を」
竹内 知史 (共同通信社科学部・原子力報道室)
福島の復興は原発事故の影響で、他の被災地より遅れていると指摘される。細野氏は、その一因として自身が関わった「除染の長期目標」への反省を口にした。原発敷地内で保管されている「処理水」や、除染土、甲状腺がん検査など福島に残る課題を具体的に指摘し、解決に向けた持論を展開した。
特に時間を割いたのは汚染水を浄化した処理水の問題。政府は希釈して海に放出することを検討しているが、反対意見や漁業への風評被害の懸念があり、結論は出ていない。
細野氏は事故時に汚染水を漏出させた記憶が残り、反対の声などにつながっていると指摘。海外でも海洋放出している事実を挙げ「福島の処理水にだけ反対するのは偏見。政府が早急に放出を決断することが、福島の復興にも重要だ」と強く訴えた。
自らが関わった「追加被ばく線量を年間1㍉シーベルト以下にする」という除染目標については「健康や安全の基準だと誤解された」と苦々しく語った。住民帰還や復興の遅れを招く懸念が当初からあったとし「健康の基準ではないと、もっと説明できなかったか。今も検証されるべきものだ」と率直に述べた。
質疑では、今後の原発利用への見解に関心が集まった。細野氏は「今の時点で最も重要なのは温暖化対策だ」と主張。「安全性が確認された原発の再稼働は必要。原発という選択肢を排除すべきではない」と現政権と同様の見解を示した。
原発事故と、新型コロナウイルス対策の共通点を指摘したことも興味深かった。自らの経験から、政府とともに危機に対処する専門家の資質として「虚栄心がない」「重要な判断から逃げない」「行政組織と関わった経験がある」という条件を示した。その上で「限られた情報の中で、その段階で分かることをきちんと判断する。そういう科学者を育成しなければいけない」と語った。
ゲスト / Guest
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細野豪志 / Goshi Hosono
衆議院議員 / member of the House of Representatives
研究テーマ:3.11から10年
研究会回数:14