2020年08月03日 13:30 〜 14:30 10階ホール
「九州豪雨災害」

会見メモ

日本気象協会の本間基寛・専任主任技師(写真左)と増田有俊・技術戦略室副室長が登壇し、「令和2年7月豪雨」と命名された7月上旬の九州地方での集中豪雨について、線状降水帯の発生状況や降水量の特徴、被害との関係について解説した。

司会 井上裕之 日本記者クラブ企画委員(西日本新聞)


会見リポート

球磨川流域に千年に1度の雨/危険判断に既往最大値

山岸 玲 (朝日新聞社社会部)

 豪雨災害が頻発化・激甚化する中、今年も大きな被害が出てしまった。九州を中心に記録的な大雨となった令和2年7月豪雨。その特徴について、日本気象協会専任主任技師の本間基寛さんは「特定地域で長期間、多量の大雨が降ったことにある」と説明した。雨が降り始めてから12日間の全国の総降水量は、2年前の西日本豪雨を上回るものだった。また、西日本の広い範囲で大雨となった2年前に対し、今回は主に九州に集中していた。

 その理由は「線状降水帯」が九州で集中的に発生したためだ。積乱雲が次々とわいて同じ場所にかかり続ける現象だが、同協会の解析では、東海から九州にかけて14事例が発生した西日本豪雨に比べ、今回は九州だけで13事例が確認された。同協会技術戦略室副室長の増田有俊さんは、発生場所や時間帯から「球磨川と筑後川の氾濫は線状降水帯が大きく寄与した」との考えを示した。

 報道機関が大雨への警戒を呼びかける際、どうしても予想される降水量の多い地域に焦点がいきがちだ。だが本間さんは「雨が多いからといって災害が起きるわけではない」と釘を刺した。専門家との共同研究の結果を紹介しながら、単に24時間で何ミリという数値より、その地域での既往最大(過去の統計最大)値を超えると犠牲者は発生しやすい傾向にあると解説した。

 球磨川の流域では、国土交通省が想定最大規模としていた1千年に1度の雨に匹敵する雨が降った。仮に強い雨域が少し南か北にずれていれば、犠牲者はより少なかったと推定され、「球磨川にとって『最悪の降り方』だった」とした。日々の気象予測の中でその地域にとっての危険な雨を知らせることや、ハードの限界を超えそうな雨になっていることを地域住民や社会に知ってもらう情報発信の方法を、民間気象会社の立場から考えたいという。


ゲスト / Guest

  • 本間基寛 / Motohiro Honma

    日本 / Japan

    日本気象協会専任主任技師 / Japan Weather Association

  • 増田有俊 / Aritoshi Masuda

    日本 / Japan

    日本気象協会技術戦略室副室長 / Japan Weather Association

研究テーマ:九州豪雨災害

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