会見リポート
2020年03月10日
16:00 〜 17:00
10階ホール
「新型コロナウイルス」(2) 岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長
会見メモ
川崎市健康安全研究所の所長で、「新型コロナウイルス感染症対策専門会議」のメンバーでもある岡部信彦所長が登壇し、世界的な感染拡大が続く新型コロナウイルスの特性などについて話した。
岡部氏は、WHO西太平洋地域事務局伝染性疾患予防対策課課長や国立感染症研究所感染症情報センター長などを歴任し、2013年から現職。
司会 上田俊英 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)
「新型コロナウイルス」シリーズ
会見リポート
「冷静になるべきはリーダーたち」
熊谷 豪 (毎日新聞くらし医療部)
新型コロナウイルスによる感染症への対応について、感染症の第一人者の言葉は重かった。まだ謎の多いウイルスに対し、社会はパニックに陥っているように見える。SARS(2002~03年)や新型インフルエンザ(09〜10年)などの対応に関わってきた岡部氏は、科学的な知識に基づいて行動する大切さを訴える。特に「冷静になるべきはリーダーたち」と強調した。
政府が2月末、小中高校の全国一斉休校を要請した際、岡部氏が「専門家会議で議論したものではない」と、いつになく怒った様子で語る姿が報道された。岡部氏は政府がつくった専門家会議のメンバー。科学的な知見に基づき、密閉空間で密集することの危険性などを示してきた。だが、一斉休校については意見を聞かれなかった。
当時、北海道ではクラスター(集団感染)が起きていたが、例えば沖縄の離島でも同じ対応を取るべきか。「(政治の)強い意志は決してマイナスではない」と擁護しつつも、医学的な根拠は薄いとした。
日本国内の現状については「丁寧に管理している庭に雑草の種が飛んできて、芽を摘んでいる状態」と評価する。「その時にブルドーザーを持ち出すかどうかだ」と問う。
実は新型インフルエンザの流行後、専門家グループは、地域の実情に応じた対応が大切だとする「教訓」をまとめた。岡部氏は今回「あまり反省は生きていない。極めて残念で、寂しい思い」と吐露した。
一方、SARS以降、世界的には対応が進んだ。未知の感染症発生についてWHOに報告が上がり、警鐘を鳴らす仕組みが整った。今回、発生から間もなくウイルスが特定され、患者発見につながっている。
新型コロナの終息は見通せない。社会、政治、そして報道に携わる私たちも「序盤戦」での教訓を生かしていきたい。
ゲスト / Guest
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岡部信彦 / Nobuhiko Okabe
川崎市健康安全研究所所長 / Director General, Kawasaki City Institute for Public Health
研究テーマ:新型コロナウイルス
研究会回数:2