2020年02月13日 14:30 〜 15:30 10階ホール
「新型コロナウイルス」(1) 尾身茂・地域医療機能推進機構理事長

会見メモ

1999年から2009年まで世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長を務め、SARSの対応にあたった尾身茂・地域医療機能推進機構理事長が、新型コロナウイルスへの対応のあり方について話した。

尾身茂氏(地域医療機能推進機構ウェブサイト)

 

「新型コロナウイルス」シリーズ

(2) 3月10日(火) 岡部信彦・川崎市健康安全研究所所長


会見リポート

「オールジャパンで対策を」

木村 彰 (日本経済新聞編集委員)

 新型コロナウイルスの感染が広がり、神奈川県で国内初の死者が発生した2月13日、「我が国が取るべき対策」をテーマとした尾身茂・元世界保健機関(WHO)西太平洋地域事務局長の会見は時宜を得た内容だった。同氏は2002~03年に起きた重症急性呼吸器症候群(SARS)のパンデミック制圧を指揮した感染症と国際保健の専門家で、政府の専門家会議のメンバーでもある。

 現状について同氏は「国内感染の早期の段階で、報告されている感染者数の背後で軽症者を含む感染が散発的に広がっている可能性がある」と、指摘。「武漢・湖北省への渡航者と発症した人との接触者に限る」とした症例の定義は、「無症状での病原体保有者や潜伏期間の人がいることを考えると多くの感染者を見落とす可能性が高く、渡航歴、接触歴を定義から外すべき」と語った。

 その上で、懸念される「感染拡大期」に備えて、①指定病院のほか集中治療ができる医療機関でも感染者を診療②軽症者は開業医を含めた医療機関でフォロー③軽度の人は自宅待機、濃厚接触者は症状があれば申告④発生状況の調査・集計(サーベイランス)は肺炎に重点――など医療体制の充実を訴えた。

 国民に伝えるべきメッセージとしては、①高齢者や基礎疾患を持つ人が一部重症化するが、多くは軽症②空気感染の可能性は極めて低く、大半は飛沫感染と接触感染③発熱や咳などを発症し数日を経ても症状が続いたり息が苦しかったりする場合は早めの受診を④渡航歴に関わらず高熱や呼吸器症状がある場合はコールセンターに相談を⑤手洗いやマスク着用などの咳エチケットの徹底は一定の効果――などを挙げた。

 最後に同氏は「09年の新型インフルエンザでは国、自治体、医療界、国民がそれぞれの役割を果たした結果、日本での死亡率は世界で際立って低かった」と強調。「All Japanでの対策を」と力強く揮ごうした。


ゲスト / Guest

  • 尾身茂 / Shigeru Omi

    独立行政法人地域医療機能推進機構理事長 / President, Japan Community Health Care Organization

研究テーマ:新型コロナウイルス

研究会回数:1

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