2020年03月27日 15:00 〜 16:00 10階ホール
「オリンピック・パラリンピックと社会」(10) 河合純一・日本パラリンピック委員会委員長

会見メモ

今年1月に、アスリート出身者として初めて日本パラリンピック委員会(JPC)委員長に就任した河合純一氏(パラリンピック水泳金メダリスト)に、東京2020大会の意義と、今後の障がい者スポーツや共生社会のあり方などについて聞いた。

司会 森田景史 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)

日本パラリンピック委員会


会見リポート

「フルーツポンチ型共生社会を」

山口 一朗 (毎日新聞社オリンピック・パラリンピック室委員兼社長室)

 アスリート出身で初の日本パラリンピック委員会(JPC)委員長に1月就任した河合純一さん。「パラリンピックは人間が持つ可能性の祭典。ハードのレガシー(遺産)だけでなく、ハート(心)にレガシーを」と東京2020パラリンピックを通して考える共生社会の方向性を示した。

 静岡・旧舞阪町(現・浜松市)出身。5歳で水泳を始めた。先天性弱視で、15歳で全盲になった。パラリンピックには1992年バルセロナから2012年ロンドンまで6大会に出場、金5個を含む21個のメダル(日本人最多)を獲得した。16年には国際パラリンピック委員会(IPC)の「パラリンピック殿堂」にアジア人で初めて選出。東京2020パラでは、日本代表選手団長を務める。

 会見の序盤で、駅の階段の下に多くの車いす利用者がいる写真を示し、「この状態で『障害』とは? 足が動かないことか。車いすに乗ることか。ここに階段しかないことか」と問いかけた。続けて「前の二つなら『障害』の責任を障害者に押し付けることになる。階段しかないことが障害なら、それは社会が生み出したもので、スロープやエレベーターがあれば障害はなくなる」と指摘した。

 64年東京大会で初めて「パラリンピック」という語が使われたことなどパラの歴史や現状を紹介し、「東京は世界で初めて2度目の夏季パラを開く都市になる。共生社会とは個性や違いを(均一に)混ぜるミックスジュースではなく、個性や食感、味わいを生かすフルーツポンチが目指すべき方向だ」と強調した。

 会見の直前に東京大会の「1年程度」の延期が決まり、質疑応答では影響を尋ねる声が相次いだ。「(日程を)主体的に決められる側ではない。万全に準備したい」と述べ、競技用義足や車いすといった用具について「開発が進むかもしれない。最大限、それを生かす」と、自国開催に向け、できた時間を前向きに捉えている。


ゲスト / Guest

  • 河合純一 / Junichi Kawai

    日本 / Japan

    日本パラリンピック委員会委員長 / chairman, Japanese Paralympic Committee

研究テーマ:オリンピック・パラリンピックと社会

研究会回数:10

ページのTOPへ