会見リポート
2020年02月27日
14:00 〜 15:30
9階会見場
「安保改定60年 その功罪と今後」(4) 山本章子・琉球大学講師
会見メモ
『米国と日米安保条約改定ーー沖縄・基地・同盟』(吉田書店2017年)『日米地位協定 在日米軍と「同盟」の70年』(中公新書2019年)などの著書がある山本氏が登壇し、60年前の安保改定過程を評価するとともに、日米同盟の課題、今後の展望を語った。
山本氏は北海道出身で一橋大学修士課程を終了後、企業勤務を経て一橋大学博士課程に進み2015年に修了、2018年から現職。2015年から沖縄国際大学の非常勤講師も務めている。
司会 川上高志 日本記者クラブ企画委員(共同通信)
「安保改定60年 その功罪と今後」
会見リポート
「対等」の負の側面に焦点を
川上 高志 (企画委員 共同通信社特別編集委員)
日米安保改定60年の連続記者会見のキーワードは「対等性」だと言える。岸信介首相は旧安保条約の不平等性を解消し、事前協議制の導入などで対等な日米関係を目指した。今も日本政府の公式見解は「人(駐留米軍)」と「物(基地提供)」の交換による「非対称」の対等である。
だが山本氏は改定交渉が成立した背景にあった「負」の側面に焦点を当てる。それが旧安保下の行政協定が認めていた「占領米軍としての特権を維持することだった」と解説。特権を担保したのは公式に調印された日米地位協定の実際の運用を定め、非公開とされた交渉当事者間の「合意議事録」だと指摘する。その存在によって対等性は虚構となる。
山本氏は沖縄や出身地・北海道での米軍訓練の実例を挙げて、合意議事録に沿って基地区域外での訓練を行う米軍の実態を紹介。それが地域の住民に日常的な被害を与え、深刻な事件・事故もたびたび起きていると強調、「非対称と言うが、『物』の提供はそんなに軽いものなのか」と問い掛けた。
「地政学」や「抑止力」というビッグワードで私たちは日米安保体制を捉えがちだ。しかし、合意議事録の存在を考えたとき、それは基地負担に直面する地方自治体の課題、内政の問題になる。「安全保障は国の専権事項だというが、地方自治を無視した安保政策は成り立たない」という指摘に向き合わなければならない。
中国、ロシアという大国、北朝鮮という不確実な存在を近隣に持つ日本の現実的な選択として日米安保条約を「消極的に支持する」と説明した山本氏は、合意議事録の破棄が望ましいが、少なくとも協定本文に則った運用に持っていくこと、地方自治体が意見を言える仕組みをつくることを具体的に提言した。揮ごうされた「辺境から見る」の言葉は、外交や安全保障には必ず人の住む「現場」があることを再認識させる。
ゲスト / Guest
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山本章子 / Akiko Yamamoto
琉球大学講師 / lucturer, University of Ryukyus
研究テーマ:安保改定60年 その功罪と今後
研究会回数:4