2020年01月24日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「安保改定60年 その功罪と今後」(2) 河野克俊・前統合幕僚長

会見メモ

河野克俊・前統合幕僚長が登壇し、安保が果たしてきた役割や今日の世界における日米同盟の意義について語った。

河野氏は1977年に海上自衛隊入隊、自衛艦隊司令官、海上幕僚長などを経て2014年から19年まで統合幕僚長を務めた。

 

司会 榊原智 日本記者クラブ企画委員(産経新聞)


会見リポート

双務性アピールし同盟強化を

毎日新聞社社会部 (町田 徳丈)

 日米安保条約を評価しつつ「何かあれば米側から不公平感が示されることが最大の弱点」と切り出した。

 

 安保条約は5条で日本有事に米国も共同対処するとした一方で、6条は米軍への基地提供を義務付けた。「日本が5条と6条でバランスをとっていると強調するのは危険。米国は命を懸けているから、(日本に対し米軍駐留経費を)10倍払えとなりかねない」と警鐘を鳴らした。

 

 米国の変化も読み解いた。米国の世論はそもそも他国への介入を嫌う流れがあったとし、冷戦後には好むと好まざるとに関わらず対ソ連の構図で西側のリーダーになったと位置付ける。だから米トランプ大統領の自国第一主義は特異ではなく「本来の米国に戻りつつある」と分析する。そんな米国を日本に引き留めておくためにも「日米安保の形を変えていく方向にすべき」と訴えた。

 

 米軍の不満を減らす方法の一つに米軍と自衛隊の「矛と盾」の関係の見直しがあると考える。専守防衛の国是の下では、主に攻撃は米軍が担い、日本は守りに回る。だが「生命財産を守るときには日本が攻勢に出ることもある」とし、攻撃能力を持つことが「双務性に近づいたアピールになる」と強調した。

 

 他方で日本の自主防衛路線や核保有に関しては「現実的ではなく、持つべきでもない」との立場。また、多国間同盟は信頼性が低く、二国間同盟が重要だとして「日米同盟の一層の強化が不可欠」と説いた。

 

 会場から質問を受ける形で、憲法と自衛隊の関係性にも話が及んだ。自衛隊は成り立ちが警察的な組織で、他国軍と行動規定が異なり「いろいろな問題がある」と説明。安倍晋三首相が提起する憲法への自衛隊明記では「違憲論の終止符にはなるが、警察の延長線上の矛盾は解消されない」と語った。解決するとしたら「憲法を変えて国防軍法をつくるしかないのでは」との見方を示した。

 


ゲスト / Guest

  • 河野克俊 / Katsutoshi Kawano

    日本 / Japan

    前統合幕僚長 / former chief of staff, SDF

研究テーマ:安保改定60年 その功罪と今後

研究会回数:2

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