2020年01月31日 11:00 〜 12:00 10階ホール
達増拓也・岩手県知事 会見

会見メモ

達増拓也・岩手県知事が3月11日を前に登壇し、東日本大震災からの復興、地方創生、自治のあるべき姿について話した。

 

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)

 


会見リポート

順調な復興の先に課題も

久慈 省平 (テレビ朝日報道資料部長)

 東日本大震災から間もなく9年。災害担当だった私を含め、多くの取材陣が駆け回った被災地は変わりつつある。大津波で壊滅した沿岸地域はハード面では〝復興〟し、数字上でも順調に成長している。達増知事が会見で示したデータはそのことを裏付けていた。

 

 復興住宅は99%が完成し、仮設住宅の被災者は大幅に減少。岩手県内を縦横に伸びる交通ネットワークが構築され、三陸沿岸道路の完成後は仙台市から八戸市まで約3時間10分もの短縮になるという。建設需要で沿岸地域の総生産は50%以上の増加、県内の就職者は10%以上も増えたという。

 

 また、陸前高田市の津波伝承館はオープンから4カ月で約10万人が訪れ、昨年のラグビーW杯で会場となった釜石市の復興状況は世界に発信された。災害と復興と繰り返す日本。達増知事は効果と進展を含めた「より良い復興」を実現したいと語るが、巨額の復興予算が今後減少する中、果たして成長は維持できるのだろうか。折しも残念なニュースが前日に流れた。宇宙誕生の謎を解明する最先端の研究施設「国際リニアコライダー」の建設計画(北上山地が建設候補地)が、国の重点大型研究計画に選ばれず、早期の実現は難しくなった。

 

 達増知事は、あるべき自治の姿を「安全を確保し幸福を追求できること」として、地方がその担い手であると主張した。首都直下地震が迫る東京への一極集中の是正が必要という指摘には誰もが賛同するだろう。しかし、その具体策はあるのか。達増知事は、地方志向が高まっていて「望ましいのは自主的な移転」とするが、理想論にも聞こえた。

 

 中央官庁と国会議員の両方を経験した達増知事。被災県のリーダーとして、霞が関の役人気質、永田町のリアルを熟知しているのは心強い。この経験を復興後の諸課題にどう生かしていくのか。「防災と幸福の自治」を実現する斬新なビジョンに期待したい。

 


ゲスト / Guest

  • 達増拓也 / Takuya Tasso

    日本 / Japan

    岩手県知事 / Governor of Iwate prefecture

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