2019年10月04日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「米中争覇」(5) 混乱が続く香港の行方 遊川和郎・亜細亜大学教授

会見メモ

香港政府の林鄭月娥行政長官は「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明したが、市民は普通選挙の実施を要求し、デモ収束の見通しは立たない。

市民と政府の対立の行方と経済に与える影響について『香港 返還20年の相克』(日本経済新聞社2017年)などの著書がある遊川和郎教授が語った。

 

司会  坂東賢治 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞) 

 


会見リポート

「一国二制度は脆弱な仕組みに」自由化とは逆方向へ

川瀬 大介 (読売新聞社国際部)

 香港では若者らによる抗議デモが長期化している。林鄭月娥行政長官の支持率は極めて低く、「(林鄭氏は)この危機をコントロールできない」と指摘した。

 林鄭氏の最大のミスは、中国本土に犯罪容疑者引き渡しを可能にする逃亡犯条例改正案を巡り、「103万人が抗議デモをした6月9日の段階で事態を収拾しなかったことに尽きる」。その後、若者たちは立法会(議会)を包囲して審議をストップさせ、林鄭氏は6月15日に条例改正案の審議の無期限延期を表明した。「わずか6日遅れの判断ミスが若者たちの暴力に正当性を与え、問題が複雑化した」と強調した。

 市民は過激化する若者を支持してはいないが、対話を呼びかける一方で抗議運動の取り締まりを強化する林鄭氏も信頼していない。混乱収束には林鄭氏の辞任も一つの手だが、若者たちが掲げる選挙制度の民主化要求にさらに火がつく可能性がある。一方、抗議側は外国に支援を求めることで「一線を越えた」。独立か“一国一制度”か――。覚悟を決めて、明日なき戦いを続けていると分析した。

 中国・香港政府の対応としては、政治的譲歩、香港財界を味方につける経済措置、武力鎮圧による強硬策などが考えられるが、いずれも非現実的で、効果が限定されていると指摘。遊川氏は「香港の住宅価格は若者の年収の21倍にのぼる。この不満が運動参加の背景にあるとされる。香港の財閥から不動産高騰の原因となっている土地を召し上げることを、香港政府は(状況収拾の)現実的対策として考えている」と語った。

 「中国が資本主義の香港をどう扱うか」。この難問を解決するために生み出された妙案が「一国二制度」だった。当時は鄧小平による改革が始まった時期。「中国も自由化していくだろう」という見方もあったが、特に近年は自由化と逆方向に進み、一国二制度は非常に脆弱な仕組みになった。1997年の返還から20年が過ぎ、香港政府の権威は著しく低下した。混乱収束はまだ見通せない。


ゲスト / Guest

  • 遊川和郎 / Kazuo Yukawa

    日本 / Japan

    亜細亜大学教授 / professor, Asia University

研究テーマ:米中争覇

研究会回数:5

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