2019年05月31日 11:00 〜 12:00 9階会見場
タカーチ・サボルチ・ハンガリーEU政策調整担当副大臣 会見

会見メモ

 

司会 土生修一 日本記者クラブ専務理事・事務局長

通訳 長井鞠子(サイマル・インターナショナル)


会見リポート

「民主主義に形容詞はいらない」

鶴原 徹也 (企画委員 読売新聞社編集委員)

 EU学校の問題児と言えば、まずは自主退校を決めたものの迷走を続ける英国だが、次は校則違反を繰り返すハンガリーだろう。この国のオルバン政権は、EUのよって立つ理念、すなわち言論の自由や司法の独立、基本的人権などを尊重していないと批判されてきている。

 「ハンガリー政府は親EUです。政府与党は今回の欧州議会選で53%近く得票し、国民に広く支持されています。我々は安心のできるEU、競争力のあるEUを望んでいます」

 タカーチさんはよどみなく発言した。ただ、その説明に耳を傾けると、オルバン政権の立場は次のようなものだと理解できた。

 EUはキリスト教の伝統を重視すべきだ。中東やアフリカからの移民流入は欧州の安定を損ねるので、阻むべきだ。欧州は連邦化をめざすべきでない、加盟国の国家主権を維持すべきだ。連邦主義者の集う欧州委員会は分不相応に欧州政治に口を出している。これは改めるべきだ。強い欧州の実現が最も重要だ――。

 移民を巡っては、こんな意見の開陳もあった。「高齢化は欧州の課題でもありますが、我々は移民受け入れではなく、家族政策やロボット・人工知能の活用で解決できると考えています。日本も同じでしょう」

 会場から、「オルバン政権は『イリベラル(非自由)民主主義』と指摘されるが、どうなのか」という質問が出た。

 「民主主義は民主主義。それが我々の信念です。民主主義に形容詞は必要ありません。リベラル民主主義だけが正しいわけではない」

 タカーチさんはそう答え、「ハンガリーはメディアによる政府批判が活発な国であり、司法の独立も保証されている」と主張。オルバン政権を「反EU的」とする非難を「フェイク・ニュース」と切り捨てた。

 自由民主主義は、臆面もない多数支配に蚕食され、退潮してゆくのだろうか。


ゲスト / Guest

  • タカーチ・サボルチ / Szabolcs TAKÁCS

    ハンガリー / Hungary

    EU政策調整担当副大臣 / Minister of State for EU Policies and Coordination

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