2019年05月21日 13:30 〜 14:30 9階会見場
片山善博・早稲田大学教授「統一地方選の総括と地方の未来」

会見メモ

「地域のことを地域が責任をもって決める」。本来あるべき地方自治の力の弱化と国任せの姿勢。これらが無投票、定数割れ、投票率の低下の背景にあると指摘した。2040年構想の圏域行政については「合併のときと同じ。今のままだと総務省の思惑になだれこむ」。地域本位に考え、実践する。地方自治力の必要性を強調した。

早稲田大学教員紹介ページ

司会 坪井ゆづる 日本記者クラブ企画委員(朝日新聞)


会見リポート

「地域本位に考え実践を」

中野 勲 (下野新聞社東京支社報道部部長)

 地方自治の衰弱に、強い危機感を持っていることがうかがえた。自分たちの地域のことは自分たちで考え、責任を持って決めるという地方自治の原点に戻って実践しない限り、地方の再生はままならない。片山氏の言葉には、自治体への強いメッセージが込められていた。

 今回の統一地方選の特徴として挙げたのは、統一率の低下、無投票と定数割れの増加、低い投票率。統一率の低下では年度替わりの4月選挙の弊害を指摘し、「(選挙時期を)11月ごろで再統一すべき。任期途中に(首長が)死去、辞職した場合でも『副』が後を継ぎ、任期は変えない方がいい」と提案した。

 無投票の増加や低投票率の背景としては、地方自治の衰弱と地方議会自体の問題点を指摘した。地域の防災・安全面や教員の多忙化をはじめとする義務教育の課題などを挙げ「教師が多忙で何とかしなければと切実に感じたら、何ができるか自分たちで考えるべき」と、さまざまな局面で自ら課題解決しない姿勢を問題視した。国(県)などに頼り「指示待ち」となっている現状に「自治体が自分たちで決めて自分たちで取り組まなければならないことに億劫になっている」と嘆いた。

 一方、議会に関しても年4回の定例会方式は「限界」と指摘。シナリオ通りの議会運営に「質問も用意したもの、答弁者も答弁書を読んでいるだけ。こんなのワクワクしない。結論が決まっていてやっているのは学芸会」と改善を求めた。

 政府が検討する「圏域行政」にも触れた。人口減少が進む地域の住民サービスを維持するため、複数の市町村が作る「圏域」が行政を運営する構想だ。「市町村は戸惑いがあるようだが、自分たちで考え、圏域がいいと思うなら主体的に取り組めばいい」とアドバイスした。地方再生には、地域本位に考え実践する「自治力」、きちんと考える「免疫力」が必要条件だと締めくくった。 


ゲスト / Guest

  • 片山善博 / Yoshihiro Katayama

    早稲田大学公共経営大学院教授 / professor, Waseda University

研究テーマ:統一地方選の総括と地方の未来

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