2019年06月03日 13:30 〜 15:00 10階ホール
「日本の労働を誰が支えるのか」(9)韓国の受け入れ政策 岩城あすか・箕面市立多文化交流センター館長

会見メモ

「企業が韓国政府の許可を得て外国に人材を求める。受け入れ総数は国が決める。外国人には労働者の権利が与えられ差別禁止の規定もある」という韓国の雇用許可制。

「軋轢はあるし問題もある。しかし、こぼれた人をNPOがケアしている」と市民の働きも高く評価。

 

箕面市立多文化交流センター

 


会見リポート

外国人労働者受け入れ政策、先行する韓国の事例紹介

吉田 美智子 (朝日新聞社文化くらし報道部)

 韓国は日本より10年以上早い2004年、外国人の単純労働者の受け入れにかじを切った。岩城あすか氏は17年、韓国に移民受け入れ政策の現地視察に行ったという。現場の視点から、韓国の先進的な三つの取り組み①単純労働者を受け入れるための「雇用許可制(EPS)」、②外国人妻を中心とする多文化家族の支援、③外国人の地方参政権と人権を保障する在韓外国人処遇基本法―について紹介した。

 韓国は1980年代までは労働力の送り出し国だった。だが、90年代以降、ベトナムなどアジアから農村部への「外国人妻」が急増し、ドメスティックバイオレンスなどが頻発して社会問題化。一方、製造業などで人手不足が深刻化するなか、日本の技能実習生をまねた産業研修制度が「奴隷労働」「人権侵害」などと非難を浴び、対応を迫られた。

 左派の盧武鉉政権は2004年、産業研修制度の廃止に向けて、EPSを導入。ベトナムやタイなど労働者の送り出し国と二国間協定を締結し、産業別に毎年、一定枠の外国人の受け入れを始めた。外国人には韓国人の労働者と同等の権利や待遇を保障し、送り出し国で中間搾取などが見つかった場合には、一時的に受け入れを中止するなど不正防止の仕組みも取り入れた。EPSでは外国人は原則、一定の就労期限を過ぎたら帰国することが前提だ。これに対し、国内に定住する外国人妻のためには、多文化家族支援法(08年)を制定。各地のセンターで生活相談や語学教育に応じている。

 さらに、岩城氏は、韓国では外国人の地方参政権が認められており、国民の請願に行政の担当者が30日以内に文書で回答しなければならない「民願」があると強調。「韓国は民主主義を自分たちの手で勝ち取ってきた歴史があり、市民力がすごい。移民政策のアップデートにも役立っている」と話した。


ゲスト / Guest

  • 岩城あすか / Asuka Iwaki

    箕面市立多文化交流センター館長 / director, Minoo multicultural center

研究テーマ:日本の労働を誰が支えるのか

研究会回数:9

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