2019年04月15日 10:00 〜 11:00 10階ホール
グリアOECD事務総長 会見

会見メモ

 経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長が会見し、2019年版「対日経済審査報告書」を発表した。日本の経済成長は強化されているものの、人口高齢化と高水準の政府債務という重要な課題が残されていると指摘。今秋に予定される消費増税は「不可欠」とした上で、8%から10%の増税にとどまるのではなく、15%程度まで徐々に引き上げていくことが必要ではないかと述べた。

 

写真左からランダル・ジョーンズ日本・韓国担当課長、アンヘル・グリア事務総長

 

司会 福本容子 日本記者クラブ企画委員(毎日新聞)

通訳 西村好美、大野理恵(サイマル・インターナショナル)

 


会見リポート

消費税、毎年1%増を提言

清水 憲司 (毎日新聞社経済部)

 経済協力開発機構(OECD)のアンヘル・グリア事務総長の記者会見は、巨額の財政赤字と高齢化という日本が直面する困難の大きさを再認識させるものとなった。OECDが会見に合わせて公表した2019年版の対日経済審査報告書は、累積赤字を削減するには今後、消費税率を20~26%に引き上げる必要があるとの見通しを示した。かたや今年10月に迫る10%への引き上げを巡り、安倍晋三首相の側近、自民党の萩生田光一幹事長代行が増税先送りに言及した。「3度目の先送り」がくすぶる中でグリア氏の警告は重みを増している。

 国際機関による経済審査報告には「財務省から出向中の職員が国内では言いにくいことを報告に盛り込み、一種の『外圧』として利用している」との見方をされることもある。しかし、グリア氏がそれを感じさせないのは、力強く率直な語り口のせいだろう。記者会見では10%への消費税増税は「絶対に必要だ」と断言。景気に与えるショックを和らげるため毎年1%ずつ増税する自前の案も披露した。

 また、グリア氏は「日本には歳出抑制と同時に歳入増が必要だ」と述べ、さらなる消費税増税に加え、炭素税の導入も提案。医療費削減に向けた入院日数の抑制や地方自治体の予算効率化も訴えるなど、国内の政治家が提唱すれば大きな反発を受けそうなテーマも提示した。

 もう一つ、多くの関係者が懸念しながらも直接論じることの少ない問題にも言及した。先進国の中央銀行による金融緩和を受け、世界で政府、民間企業、家計の債務が急増している問題だ。グリア氏は「消費を増やすために金利をゼロ%にして借金をしやすくする。まさに各国当局が意図したことだ」と皮肉を込めて語った。好調な経済情勢に隠れて忘れがちな「耳の痛い話」をグリア氏は今後も発信していくだろう。


ゲスト / Guest

  • アンヘル・グリア / Angel Gurría

    経済協力開発機構(OECD)事務総長 / Secretary General, Organisation of Economic Co-operation and Development (OECD)

  • ランダル・ジョーンズ / Randall Jones

    経済協力開発機構(OECD)経済総局シニアエコノミスト 日本・韓国担当課長 / Senior Economist for Japan and Korea, Economics Department, Organisation of Economic Co-operation and Development (OECD)

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