2018年11月14日 16:00 〜 17:00 10階ホール
「HIV/エイズ」治療はどこまで進んだか 白阪琢磨・公益財団法人エイズ予防財団理事長

会見メモ

HIV/エイズ

第32回日本エイズ学会学術集会・総会(12月2日~4日 大阪国際会議場/大阪市中央公会堂)を前に、会長を務める白阪氏が会見。

「いまHIVでは死にません」「いまHIVはうつりません」。

抗レトロウイルス治療(ART)を続ければウイルス量を検出限界未満に抑えることができる。普通に生活ができて、パートナーへの性感染のリスクもなくなる。「治療はここまで進んだ」と力強いメッセージ。

 

第32回日本エイズ学会学術集会・総会

 

司会 宮田一雄会員


会見リポート

HIV治療の進歩とU=Uキャンペーンの可能性

 内閣府が今年3月に発表した世論調査によると、エイズについて「死に至る病である」と思っている人が全体の半数を超える55.2%を占め、「原因不明で治療法がない」と答えた人も33.6%だった。

 だが、日本で最も多くHIV診療にあたっている臨床医である独立行政法人国立病院機構大阪医療センターの白阪琢磨HIV/AIDS先端医療開発センター長は「治療は進んでいます。いまHIVでは死にません」という。

 エイズの原因となるHIV(ヒト免疫不全ウイルス)に感染したとしても、体内でHIVの増殖を抑える抗レトロウイルス治療(ART)によって免疫の力が回復し、感染していない人と同じくらい長く生きていくことが期待できるからだ。

 治療の進歩と普及により、HIVとエイズのイメージは大きく変わっている。

 白阪博士は「いまHIVはうつりません」という予防のメッセージも伝えている。誤解を招きやすいので、もう少しかみ砕いて説明すると「HIVに感染している人(HIV陽性者)が治療を続け、体内のウイルス量が検出限界値未満という極めて少ない状態に抑えられ、さらにその状態が維持されれば、HIV陽性者から他の人に性行為でHIVが感染するリスクは実質的にない」という。

 最近の10年近い研究の蓄積でこのことが確認され、国際的には2年前から「U=U 検出限界値未満(Undetectable)=うつらない(Untransmittable)」というキャンペーンが展開されている。

 日本でもU=U Japan Projectが活動を開始し、日本社会に適したかたちでのU=Uキャンペーンが今後、展開される見通しだ。治療の進歩を踏まえ、HIV陽性者への偏見や差別の解消に主眼を置いた社会的メッセージであり、同時に検査や治療の普及をはかるキャンペーンだという。

 もちろん、U=Uは重要なメッセージではあるが、その結果として、HIV/エイズを含む性感染症の対策としてセーファーセックス(より安全なセックス)のメッセージをおろそかにしていいということにはならない。予防対策は様々な選択肢を組み合わせつつ効果の最大化をはかる必要があるからだ。

 また、様々な事情から治療による検出限界値未満の維持が困難なHIV陽性者もいる。治療の成果を強調するあまり、そうした人たちへの偏見や差別が逆に強まるような事態を避ける必要もある。

 白阪博士は公益財団法人エイズ予防財団の理事長であり、厚生労働省エイズ動向委員会の委員長でもある。HIV/エイズ対策への社会的理解を求めるうえでもわが国のキーパーソンといっていい。

 12月2~4日に大阪で開かれる第32回日本エイズ学会学術集会・総会では会長を務める。U=Uを含む治療の成果を社会的な理解にどうつなげていくか。エイズ学会および、同じ大阪で時期をあわせて開催される12月1~2日の世界エイズデー【一般公開HIV/エイズ啓発特別イベント】では、HIV陽性者やNPO、臨床医、研究者らがそれぞれの視点から充実した議論を展開していくことを期待したい。


産経新聞出身  宮田 一雄

ゲスト / Guest

  • 白阪琢磨 / Takuma Shirasaka

    日本 / Japan

    第32回日本エイズ学会学術集会・総会会長/エイズ予防財団理事長 / Representative Director, Japan Foundation for AIDS Prevention(JFAP)

研究テーマ:HIV/エイズ

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