2018年07月17日 14:00 〜 15:15 9階会見場
「公文書管理を考える」(7) 小池聖一・広島大学文書館館長

会見メモ

現在の改革論議は拙速と批判。「抜本的改革には独立の記録管理局を創設し、保存期間以後の文書を含む統一的管理権、文書の廃棄権、各省への監査権、処罰権限を付与すべき。各省固有の文化で作成される文書を読み解く能力を持つ記録管理官の養成も必要」

広島大学文書館

 

 

司会 川村晃司 日本記者クラブ企画委員(テレビ朝日)


会見リポート

管理は統一・独立・実務的に

青島 顕 (毎日新聞社社会部)

 外交史料館職員などを経験した小池氏が、長年の実務経験に基づいて公文書管理の抜本改革を訴えた。

 主張の肝は、独立機関「記録管理局」の設置だ。管理局が現用・非現用(保存期間満了後)を問わず文書を統一的に管理し、各省庁の文書を捨てる権限や文書管理の運用を監査する権限を持つ構想のようだ。管理局には「会計検査院と同様の力を持つべきだ」と主張する。

 提言は管理局の権限にとどまらない。管理局で働く「記録管理官」には、特定秘密など機密情報を管理・監督する能力と倫理観を持つことを求める。さらに実務能力を考慮し、局の設置は総務省行政管理局主導で当たるべきだという。現在の公文書管理の司令塔役である内閣府については「調整官庁」と言い切り、専門能力に疑問を呈する。

 小池氏の描く公文書管理の理想の司令塔は、独立していて、実務能力と当事者性を兼ね備えた組織のようだ。それだけに実現には相当な議論や準備が必要だろう。自身の所属する広島大学文書館でも、文書の統一的管理の実現に5年がかかったのだと説明した。

 財務省の決裁文書改ざんを受け、7月20日に政府が閣僚会議で決定した不祥事の再発防止策に対する小池氏の評価は厳しい。「インテリジェンスを扱うのだからもっと慎重に設計する必要がある。きっちりとした人材育成を長期的に進めるべきだ」と言う。特に現在は政府内で特定秘密のチェックを担当している「独立公文書管理監」が、一般公文書のチェック機関のトップを兼ねる制度設計について「(現状でも)機能していると思っていない。問題が大きい」と批判する。

 小池氏の提言はユニークで、公文書管理の実務経験を持たない記者が、その善しあしを評価するのは荷が重い。とはいえ、文書管理の制度設計には熟議が必要であることは理解できた。政府・与党が今回、「森友学園・加計学園」の問題への世論の批判を収めることを目的に、制度改革を密室で短い時間の間に決めるやり方に問題があることは間違いなさそうだ。


ゲスト / Guest

  • 小池聖一 / Seiichi Koike

    日本 / Japan

    広島大学文書館館長 / Director, Hiroshima University Archives

研究テーマ:公文書管理を考える

研究会回数:7

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