2018年05月30日 17:30 〜 19:15 10階ホール
上映会「共犯者たち」

会見メモ

 李明博政権、朴槿惠政権下で行われた公共放送KBS、公営放送MBCへの言論弾圧とそれに対する抵抗を描くドキュメンタリー。

 写真提供:art9

 


会見リポート

権力のメディア支配と闘う

安尾 芳典 (共同通信社客員論説委員)

 メディア支配をもくろみ、言論弾圧を図る政権に立ち向かう、解雇されたテレビプロデューサーが描いたドキュメンタリー映画だ。

 日本で人気の韓流ドラマの多くを制作している韓国の代表的テレビ局のKBS(韓国放送公社)とMBC(文化放送)の経営陣は事実上、大統領の任命で、政権から送り込まれていた。その社長らに米国のマイケル・ムーア監督とほぼ同じ手法でカメラとマイクを突き付けていく。

 2008年に李明博大統領が政権の座に就いた直後、MBCの報道番組で米国産牛肉の輸入問題が取り上げられた。その結果、大規模抗議デモが起きて政権が窮地に陥ると、李政権は両テレビ局の取り込みを図る。

 KBSでは社長を任期途中で追い出し、政権寄りの人物を代わりに送り込み、メディア支配を図った。

 MBCでも、政権のメディア弾圧に抗議するプロデューサーや記者らが次々に解雇されたり、不当に配転されたりした。解雇者は200人を超えたという。

 この映画を製作した監督の崔承浩氏もMBCの看板報道番組のプロデューサーだったが、李明博政権下の2012年に、公正な放送を求めるデモに参加し解雇された。

 両テレビ局では政権に批判的な番組が次々と姿を消し、李大統領が登場する「御用番組」などに取って代わった。

 映画では、向けられたマイクをさえぎる社長に「記者が質問できなければ国が滅びます」と崔氏は声を上げる。弾圧されながらも立ち上がるテレビマンらの姿も描いている。

 崔氏は解雇後、ネットメディアを立ち上げ、この作品を製作した。ドキュメンタリー映画は2本目で、前作の『自白』は情報機関によるスパイでっち上げを描いた。これら2作品とも韓国では大きな反響を呼んだ。

 崔氏は昨年末、MBCに社長として復帰した。


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