2018年05月10日 14:00 〜 15:30 9階会見場
「朝鮮半島の今を知る」(6)北朝鮮核危機とサミット外交 小此木政夫・慶応大学名誉教授

会見メモ

「北朝鮮は、軍事力の二義性=抑止力と外交力をよく理解している。核ミサイルがなければ誰も相手にしないことをわかっている」「米国は北朝鮮を放置すれば米本土に到達する核ミサイルが完成することを重く見た」などの分析を披露しながら、初の米朝首脳会談への動く朝鮮半島情勢について話した。

 

司会 五味洋治 日本記者クラブ企画委員(東京新聞)


会見リポート

局面変えた3つの「不都合な真実」

水沼 啓子 (産経新聞社外信部次長)

 北朝鮮は本当に非核化に応じるのか。国際社会がまた欺かれる―。史上初の米朝首脳会談を前に払拭できない疑念。50年近く朝鮮半島を研究してきた小此木政夫氏の展望は、本人の言葉を借りれば「楽観的」だ。

 小此木氏はまず北朝鮮指導部が軍事力の二義性つまり最も大きな抑止力を持ったとき、最も大きな外交力を発揮できることをよく承知していると指摘する。北朝鮮が昨秋にかけて米国本土に到達する核ミサイルの開発能力を誇示してきたのも、意図的に「第三次核危機」を醸成し、米国が北朝鮮との交渉に応じるよう外交的に利用したからだという。

 昨年、偶発的な軍事衝突も危惧される中、小此木氏は米国、北朝鮮、韓国がそれぞれ抱える「不都合な真実」に着目し、いずれ局面が変わることをすでに予測していた。米国は北朝鮮の核開発を軍事力で阻止することは可能だが、行使すれば多大な損害が出ることは明らかだ。

 北朝鮮は核戦力を完成させても、それだけでは生き残れない。昨年採択された国連安全保障理事会の制裁決議は事実上の経済封鎖ともいえる厳しいものだ。韓国は、武力衝突が発生すれば確実に自国も戦場になるため非核化とともに平和体制の構築は不可欠で、これは南北共通の目標でもある。この3つの「不都合な真実」が奇妙なバランスをとる中で、北朝鮮が対話路線に転じた。

 小此木氏は、北朝鮮が外交路線だけなく生存戦略も修正しようとしているのではないかと分析する。独裁体制の北朝鮮では、若い金正恩朝鮮労働党委員長が今後、数十年に渡って国を率いていかなければいけない。外交力を使い、新しい「生き残り」戦略を整えられるのは今しかないと考えているはずだという。

 北朝鮮を巡る緊張状態に終止符が打たれ、いよいよ朝鮮半島に平和体制が築かれるのだろうか。


ゲスト / Guest

  • 小此木政夫 / Masao Okonogi

    日本 / Japan

    慶應義塾大学名誉教授 / professor emeritus, Keio University

研究テーマ:朝鮮半島の今を知る

研究会回数:6

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