2018年04月13日 14:00 〜 15:00 10階ホール
著者と語る『官僚たちのアベノミクス-異形の経済政策はいかに作られたか』 軽部謙介・時事通信解説委員

会見メモ

アベノミクスが政策としてまとめあげられていく過程を追った作品『官僚たちのアベノミクス-異形の経済政策はいかに作られたか』の著者が、執筆の動機や取材エピソードを語った。

『官僚たちのアベノミクス-異形の経済政策はいかに作られたか』

 

司会 竹田忠 日本記者クラブ企画委員(NHK)

 


会見リポート

日銀は「2%目標」に失敗、財務省は影響力低下

川北 隆雄 (東京新聞出身)

 著作について「この本はファクト・ファインディング中心。単に何があったのか、いわば記録性を重視したもの」として、価値判断を排除したという。しかし真の思いは、そうではないようだ。

 安倍晋三首相の経済政策であるアベノミクスを「異形の経済政策」と断定していることからも、明らかだ。「広辞苑」には、異形とは「普通とはちがった形。怪しい姿」とある。怪しい、つまりかなり胡散臭いものと捉えているといえよう。

 では、どこが胡散臭いのか。最大のポイントは、アベノミクスの「第1の矢」と位置付けられた金融政策だという。円高是正から円安誘導、デフレ脱却を目指して市場にマネーを大量に供給するため、日銀は国債を異常な水準にまで買いまくった。金融論の教科書では中央銀行ができないとされていた長期金利のコントロールまで、行うようになった。

 そこまでやったにもかかわらず、「結果は惨憺たるものだった」と評価する。なぜなら、黒田東彦日銀総裁は就任時、「2年間で2%の物価上昇を実現する」と自信たっぷりに公約したものの、5年たった今、物価上昇率はゼロ近辺をうろうろしている。「実現できなかったら辞めます」と公言した岩田規久男前副総裁は、ひっそりと去ったものの、黒田総裁は2期目に突入した。

 一方で、目立ってきたのが財務省のパワーダウンだという。かつて「官庁の中の官庁」として、霞が関のみならず永田町にも大きな影響力を誇った同省は今、日銀の権能肥大化に対して、目立った動きを示していない。それは、「官邸を怒らせてはまずい」と自粛しているだけではなく、「本当に権力、権限を失い始めているのではないか」と分析する。

 話を金融政策に戻すと、異常に膨らんだ日銀の国債保有残高をどうするか、いわゆる出口政策は当分はないとみる。ただ、「出口を出るとき、日本経済に無茶苦茶な災害になるかもしれない」と警鐘を鳴らす。


ゲスト / Guest

  • 軽部謙介 / Kensuke Karube

    日本 / Japan

    時事通信解説委員 / Editorial Writer, Jiji Press

研究テーマ:『官僚たちのアベノミクス』

ページのTOPへ