会見リポート
2011年08月25日
12:00 〜 13:30
10階ホール
昼食会 笠間治雄 検事総長
会見メモ
会見リポート
可視化 直感ではない説得力を
野上 英文 (朝日新聞大阪社会グループ)
笠間治雄・検事総長は裁判員裁判と組織改革、取り調べの録音・録画(可視化)の3点について語った。
なかでも関心が集まった話題は可視化だと思う。笠間総長は落語のように一人二役を演じて話し始めた。
検事「本当にやってないのか」
容疑者「う~ん、本当のことしゃべっちゃおかなぁ」
このように否認から自白に移る説得過程を撮影すると調べの進行が止まり、「能力ある取調官でも供述させられなくなる。簡単に全面可視化という訳にはいかない」と訴えた。
未検証なのに、なぜ難しいと決めつけるのか? 記者の一人から質疑で突っ込まれると、「だから全過程を含めて試行して検証する。ただ長年の経験から、駄目だろうというのは直感でわかること」と反論した。
特捜部・特別刑事部による可視化の実施件数は7月末までに、18人に計101回。容疑者は家族や所属組織の話題で口が重くなる傾向があるが、「件数が少なく、評価できる段階じゃない」という。
大阪地検の不祥事を「過度に供述調書に依存した捜査が根本的に間違っていた」と改めて語り、「結論ありきの調べは録音・録画でやりにくくなる。(取り調べ検事は)嫌がるけど、取り組んでもらうよう仕向けていかねばならない」と結んだ。
また、「やるべきことは捜査の充実。公判に精力を取られて根っこが腐っている」とも語った。私は大阪で検察担当になって2年になるが、裁判員裁判に力が注がれる半面、特捜部に対する内部のチェックが十分機能しなかったことが、証拠改ざん事件の背景にあったと思う。
笠間総長は柔和な語り口で、特捜歴12年の「現場派」ならではの視点で話した。ただ、全面可視化については結論ありきの印象も受けた。来春に公表される検証結果では、検察の世界だけでわかる「直感」で済ませない説得力が求められる。
ゲスト / Guest
-
笠間治雄 / Haruo KASAMA
検事総長 / Prosecutor-General, Supreme Public Prosecutors Office
研究テーマ:記者研修会