会見リポート
2011年04月20日
16:00 〜 17:30
10階ホール
シリーズ企画「3.11大震災」 停電回避緊急提言 梶川裕矢東大特任講師ら
会見メモ
東京電力の夏のピーク時の電力不足や停電を回避する緊急提言をまとめた化学工学会の研究者が、提言内容を説明し質問に答えた。
≪「東京電力がリアルタイムに情報開示し「需要の見える化」が大切だ」≫
提言の理念として、7月まで3カ月以内で対応策をまとめなければならず、しかも、この対応が今後10年~20年の日本経済や社会のあり方を左右するものになると位置付け、将来に禍根を残さず、我慢しすぎない現実的対応を考える姿勢を示した。
提言は、第一に電力供給量の増加策として、太陽光発電、蓄電技術、非常用発電機の活用などをあげ、365万KWの増加が可能と説明した。第二に電力需要の削減策として、冷蔵庫、照明、エアコンの買い替えや節電といった機器による需要削減、パソコン利用の工夫、電車の間引き運行、待機電力削減など行動ライフスタイルの変化を列挙し、あわせて280万KWの削減が可能と述べた。さらに、第三に、休日や勤務時間のシフトや家族ごと居住地を変更したり夏休みの観光誘導など、電力需要の時間・空間シフトを行えば615万KWの削減が見込めると計算した。
さらに「電力需要の見える化」をあげ、消費者が効果的に行動するために東京電力が電力需要をリアルタイムで情報公開するよう求めた。
出席者 古山通久(九州大学)、梶川裕矢(東京大学)、松方正彦(早稲田大学)中垣隆雄(早稲田大学)、福島康裕(台湾国立成功大学)、窪田光宏(名古屋大学)
司会 日本記者クラブ企画委員 泉 宏
配布資料
http://www.jnpc.or.jp/files/2011/04/6430ecee50fe5e56afab5684b3261c50.pdf
化学工学会のホームページ
会見リポート
「大電力需要の見える化」を
帆足 養右 (元朝日新聞論説委員)
昨年7月の猛暑時には東電管内で最大電力需要が6000万㌔㍗を突破した。東電によると、今夏の供給電力は原発事故の影響で最大5500万㌔㍗止まりという見通しだ。
大停電は、ある瞬間に電力消費が集中して供給電力を上回った時に発生する。だから今夏は、首都圏を巻き込む大停電が危惧される。
大電力が不可欠の化学工業にとっても深刻だ。化学工学会有志は、節電、省エネに加えて、電力消費の時間帯や活動拠点を分散することで、大停電の回避を提言している。しかし、好きな時に好きなだけ使える電気の利用をどう振り分けるか、具体策がなければ絵に描いたモチだ。
電力需要の4割を占める工場などの産業分野は、事前協議で操業時間の振り分けが可能かもしれない。でも、大災害後の日本経済を支える生産活動への制約には異論も出よう。
電力需要が3割の市民生活には強制力をかけにくく、急旋回がどこまで可能か。「電力需要の見える化」が切迫感の啓発に効果的と提案者はいうのだが……。
やはり需要3割の事業所・オフィスのうち、商業施設も営業時間の分散は簡単ではない。たとえば飲食店だと、昼食時間のずれを利用者がどこまで容認できるだろうか。私たちは、停電危機は起きないという楽観的な前提で電化生活を享受してきた。
原発から20キロ圏内で行方不明の家族捜しも許されない男性の訴えを伝えたテレビニュースが忘れられない。「原発なんていらない。それなら電気は使えないというのなら、電気もいらない」。この深い痛みを共有する中で、大停電の課題に向き合いたい。
ゲスト / Guest
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停電回避緊急提言
研究テーマ:シリーズ企画「3.11大震災」