2010年09月01日 00:00 〜 00:00
大林 宏 検事総長

会見メモ


2010年6月に就任した大林宏・検事総長が昼食会で「国民の司法参加と検察」のテーマで話し、質問に答えた。

大林検事総長は裁判員裁判について、9月以降、否認事件や重大凶悪な事件が対象となり、検察としても「正念場を迎える」と述べた­。小沢一郎氏の政治資金問題について、秘書を起訴したが小沢氏本人は嫌疑不十分で不起訴処分になったことについて「公判請求を行­うのに十分な証拠がなかったことに尽きる。検察は必要な捜査を行い、必要な処分を行った」と説明した。検察審査会については、戦­後の占領時代にGHQが求めた起訴陪審制度に代わる制度として作られた歴史を説明し、強制起訴を担当する指定弁護士に検察は協力­していると述べた。そのほか、取り調べの可視化、検察による記者会見や説明責任のあり方などの質問にも答えた。
司会 日本記者クラブ理事 小櫃真佐己(フジテレビ)
代表質問 日本記者クラブ企画委員 菅沼堅吾(中日新聞)

会見リポート

大林流 使命見つめて地道に
1990年6月、時の検事総長、筧栄一氏は「歴代やっていると思って受けたが、初めてだった」と、当クラブでの会見後に語っていたことを思い出す。以来慣例化し、登壇は20年で10人目となったが、民主党政権下で初めて就任した第25代の検察トップは最初、中でもお堅い法務官僚然とした印象だった。

「具体的な事件が最初から出てきましたな」。小沢一郎前民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の政治資金事件を巡り、「検察の正義が揺らいでいるのではないか」と指摘した代表質問にこう返し、「厳正公平に法と証拠に基づき、今後とも職務を果たしていく。検察の正義が変わったとの認識はない」と言い切った。

「厳正公平」「不偏不党」。法務・検察の金科玉条であり、「これを繰り返していれば間違いはない」という検察主流の伝統は生きている。

一つひとつの質問に対し、自分の言葉で丁寧に答える姿勢が、会場の空気を徐々に変え、安定感を醸し出す。検事の“血潮”を感じたのは、ある交通死亡事故の無罪判決にまつわるエピソードを聞いた時だった。

用意された「判決内容を検討した上で」という紋切り型のコメントが気に入らなかった。「被害者側は法廷でがっくりきていた。検事は黙って帰る。被害者は法廷に置き去りにされた。無罪がやむを得ない事件もあるが、この事件は控訴することが決まっていた。『到底承服できない。控訴の方向で検討する』と言えば被害者は納得する」。検察は直ちに控訴し、2審で逆転有罪となった。

検事本来の使命を見つめて現場に心を置き、地道を嫌わないのが「大林流」なのだろう。国民の司法参加と政権交代で、検察は今、かつて経験したことのない対応を迫られている。こんな時代だからこその検事総長である。


読売新聞東京本社編集局次長兼社会部長 溝口 烈

ゲスト / Guest

  • 大林 宏 / Hiroshi Ohbayashi

    日本 / Japan

    検事総長 / Prosecutor-General, Supreme Public Prosecutors Office

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