会見リポート
2010年07月26日
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丹羽宇一郎・中国大使
会見メモ
民間人として初めて中国大使に就任した丹羽宇一郎氏が赴任を前に記者会見し、「国のため命をささげる。誤りがあれば即刻辞任する。私の覚悟はそんじょそこらのものではない」と決意を語った。
丹羽大使は「隣国とのつきあいは1000年、2000年と続く。いざこざが起きて損をするのは国民だ。安心につきあっていける外交が必要となる」と述べ「私は愛国親中でいく」と意気込みを語った。外交の3つの原則に①国益②利害調整力③国のディグニティ(品格)をあげ、特に「世界から尊敬されるディグニティが最も重要なポイント」と強調した。
その上で、「最近の日本は否定的な『暗い反省』ばかりで、こういう日本になるんだという『明るい反省』がない」と指摘し、「明るい反省で世界の信頼を集める国」をめざすことを呼びかけた。日中関係について①両国民の草の根の交流②日中FTAなど経済連携――を強化したいと意欲を示した。
司会:坂東賢治・日本記者クラブ企画委員
在中国日本国大使館のホームページ
http://www.cn.emb-japan.go.jp/index_j.htm
会見リポート
「愛国親中」の精神で日中外交
加藤 青延 (NHK解説主幹)
民間人として初の駐中国大使となった丹羽宇一郎氏。その丹羽氏らしさが見えたのは、会見冒頭、のっけから、「どうしてこんな馬鹿な仕事を引き受けたのかという人も結構多い」と切り出し、「給料が安く、制約も多い」そんな仕事を引き受けたのは、金や名誉のためではなく、残りの人生を、国のためにささげたいという気持ちから決断したものだと強調したあたり。
日本の政界やマスコミに対して、マイナス思考の「暗い反省」ばかりして、お互いに足を引っ張り合っていると痛烈批判。マスコミが、自分の言葉をどうとらえるかは自由だとしながらも、プラス思考的な「明るい反省」で記事を書くよう求めた。
一方、会場から、「中国政府が、丹羽氏の出身元の伊藤忠の商権を利用して、日本の対中外交に揺さぶりをかけてきた場合どうするのか」と質問されたのに対して、丹羽大使は、自分の価値観や哲学が、そのようなことで、揺らぐことは、絶対にないと断言した。
また、丹羽大使をサポートする立場にある外務省の官僚体制について、「国益ではなく、省益のために仕事をしている」と辛口評価。民間出身の大使として、そうした悪習を改めさせるとの意欲をのぞかせた。
日中関係について、丹羽大使は、かつて「政冷経熱」という時代もあったが、グローバリゼーションの進展の中で、これからは「政冷経冷か政熱経熱しかない」と述べ、今後は、10年、20年という短期的な視野ではなく、1000年、2000年という視野にたって、「愛国親中」の精神で臨みたいと表明した。
そして具体的には、大相撲の中国での開催など、日中間の国民同士の交流に強い意欲をのぞかせると共に、巨大な市場となる中国との間でFTAを結ぶ重要性を強調した。
ゲスト / Guest
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丹羽宇一郎 / Uichiro NIWA
中国大使 / Ambassador of Japan to China