2009年09月04日 00:00 〜 00:00
石原信雄・地方自治研究機構会長・元内閣官房副長官

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会見リポート

新しい政官関係はどこへ

青山 彰久 (読売新聞編集委員)

官僚支配の打破を唱えて政権交代を果たした民主党。その民主党が選挙中に掲げた政治・行政の新しい構想を、政と官の実態に最も精通した一人が真正面から論じた。

自治官僚として34年。その後、竹下・宇野・海部・宮沢の自民党内閣から細川・羽田の非自民内閣、自社さの村山内閣までの7年3カ月、首相官邸で官僚機構のトップとして事務の官房副長官を務めた。82歳とは思えないほど、分析は微に入り細に入り、具体的で精緻だった。

「政治主導へ切り替えることには誰も異論がない。私も賛成だ。だが、具体化するなら気になることがある」。こう言いながら、事務次官会議の廃止や国家戦略局の創設といった主要な構想を一つずつ採り上げ、「この構想は本当に動くのか」「動くための条件は」などと論じた。

ただ、123年間続いた次官会議の廃止では、会議の主宰者だったため、「次官会議は省庁間や与党との調整状況を閣議前に確認するだけ。それでもいけないというなら、何をか言わんやだ」と熱くなった。

官僚が前面に出たのは、「見識や経験を考えず、派閥の論理で順送りに閣僚が選ばれたから」という。官僚が族議員と一緒に抵抗する現象も、「強い指導力を持つ首相が登場した内閣では起きなかった」。だから、政治主導の体制とは結局、「その時々の政権を担当する政治家の力量で決まる」と断言した。

「独立行政法人や公益法人の中には批判に耐えられないものがある。官僚組織は大いに反省が必要だ。だが、国民生活にかかわる重要な法律は政府が責任を負う。官僚組織をうまく使ってもらいたい。官僚組織を全く排除して政治家だけでやれば、どうしても無理がくる」

これが結論だった。この言葉を、「官の擁護」とみるか、政官関係を作り直す「手がかり」とみるか。

ゲスト / Guest

  • 石原信雄 / Nobuo ISHIHARA

    日本 / Japan

    地方自治研究機構会長・元内閣官房副長官 / President, Research Institute for Local Government; Vice Cabinet Secretary

研究テーマ:総選挙後の日本

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