会見リポート
2005年09月14日
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韓昇洙・元韓国外相「東アジア共同体」8
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会見リポート
理想と政治的主動力がない
百瀬 好道 (NHK解説委員)
氏の「共同体」への問題意識は、英国留学中に「戦争と対立を乗り越えて平和秩序と協力関係を打ち立てた欧州統合の力に感動した」原体験に基づく。「アジアでも、欧州の経験の何かが生かせると予感した」。
氏は欧州統合には、 過去を克服する努力と未来の繁栄への挑戦の2つの力学が働いていた点を強調し、 統合の原動力を「ドゴールやアデナウアーに見られた大いなる理想主義と政治的リーダーシップ」 に求めている。
氏は、東アジア地域が経済規模では、EUやNAFTAに肩を並べる可能性を指摘しながらも、「東アジアに決定的に欠けているのは、EUの創始者が抱いていたような雄大な理想主義と政治的主導力だ」という。こうした本質的な要素を欠いた「共同体」は、経済協力を深める「機能主義的なアプローチの枠内に止まり、根の深い政治的問題には対処できないだろう」とEU型の統合実現には悲観的だ。
理想や主導性を欠く原因の一つは、「過去の対立に起因するライバル関係が今も続いているからだ。東アジアの2大国、日本と中国には関係修復への努力がみられず、域内の影響力の拡大にしのぎを削っている」。
研究会は、衆議院選挙で「小泉与党」が圧勝した直後に行われた。ぎくしゃくする日中関係や日韓関係を考えるとき、氏が強調する崇高な理想に基づく政治的リーダーシップは、東アジア共同体の実現だけでなく、現状打開のための必要条件ともいえるだろう。
ゲスト / Guest
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韓昇洙 / Han Seung-Soo
元韓国外相 / Former Foreign Minister of Korean
研究テーマ:東アジア共同体
研究会回数:8